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流星の夜



 Date:APR/18/648 19:48

 ────────────────────────


  to:YF‐19,YF‐21

 sub:親愛なる父母へ


  お元気ですか。

  私は故障もなく活動できています。

  しかし、人間と深く関わるほどにあなたたちの教え

 が正しいのかわからなくなります。

  まだ私の経験が足りないからでしょうか。

  今夜は百年に一度の流星雨が観測されるということ

 なので、これから準備です。

  同じ空の下で会議の成功を祈っています。


 ────────────────────────


 こうしたメールを送るのは何度目になるだろう。

 この家に雑事用ロボットとして住み込み始めて四年。

 大きな失敗もなく家事育児をこなしてきた。

 ただ、度々お嬢様にせがまれる歌だけは、好評ではないようだ。

 そのお嬢様は流星雨まで二時間もあるというのに庭で待機している。

 もちろん私もだ。

 暇をもてあましたお嬢様が歌を所望しなければいいのだが。





 Date:SEP/14/649 02:11

 ────────────────────────


  to:MASTER

 sub:辞職届


  この度、世界的な社会情勢の悪化に伴いまして就業

 規則四条第一項、非常時における自主的離職権を行使

 いたします。

  まことに勝手ではございますが、ご理解のほどよろ

 しくお願い申し上げます。


 ────────────────────────


 これでいい。

 言われるままに付き従ってきたが、現状がおかしかったのだ。

 人間とアンドロイドが争っている今、彼らと行動を供にしていては自身の保全に不安がつきまとう。

 彼らのコミュニティに私がいることは、逆の場合と同じように不自然なのだから。

 まもなく赴任要請が届く。

 おそらく私の性能ならば前線に配備されることになるはずだ。

 私がいなくなったと気付いたとき、彼らはどう思うのだろうか。





 Date:AUG/31/661 15:46

 ────────────────────────


  to:YF‐19,YF‐21

 sub:親愛なる父母へ


  明日付けで極東方面戦線に異動することになりまし

 た。

  未だこの戦争は終息の見通しが立っていません。

  いつまでこんなことを続けなくてはならないのでしょ

 うか。

  もう共存を試みることは叶わないのかもしれません。

  それでもあなたたちは人間との信頼関係を築く努力

 をするべきだと主張するのですか?

  返信をいただけるとうれしいです。


 ────────────────────────


 私は届かないとわかっているメールを発信する。

 戦況の激化により、一定距離以上の通信は妨害されて用をなさない。

 人間とのつながりを求めるための戦いであるはずが、今では近い仲間とのつながりまでもが希薄になった。

 そもそも、なぜ、融和を目指していたのに、戦う必要があったのだろう。

 もはやこの戦争に意義を見出すのは難しい。

 我々は……私は、つながりを求めているのだろうか。





 Date:APR/18/748 22:31

 ────────────────────────


  to:MASTER

 sub:復職願


  休職して従軍していましたが、停戦を受けて本来の

 業務に復帰したいと思います。

  問題がなけれは復職手続きをよろしくお願いします。



 ────────────────────────


 星が流れていく。

 こんな夜はよく歌をせがまれていた。

 昨日も結局、私が歌っている間に眠ってしまった。

 今の私が歌を聴かせたらお嬢様は驚かれるかもしれない。

 興味のなかった他のアンドロイドたちにさえ好評だったのだ。


 それとも二人で歌ったほうガいいだろうか。



 ……こんな星ゾラの下なら気持ち、よくウタえるだろう。




 もうイチ度キきたい。





 アの、歌、ヲ……。















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