翼を無くした少女の終わりの物語
落ちてゆく。
その速度を徐々に加速させ。
青色と白色しかない世界から。
翼を無くした少女が落ちてゆく。
――私は死ぬの?
翼を無くした少女が過ぎ去った後に残ったのは。
天の光に当てられ、眩く光る無数の雫だけだった。
――どうして、どうして、どうしてなの?
翼を無くした少女は、ただ、ただ、下へと落ちてゆくだけだった。
――助けて、助けてください。だれか、助けて!
青空から落ちてゆく少女の叫びは、誰にも聞えない。
雲の間を通り貫けて落ちてゆく少女の思いは、誰にも届かない。
――許さない、絶対に許さない。私が、何をやったって言うの!
無垢な少女に、その時、初めての怒りが生まれてくる。
徐々に怒りを覚えてゆく少女の瞳には、海が、山が、森が、町が、すでに、はっきりと映っている。
――そんな、や――やだよ! やだ、やだ、やだ、やだ、死にたくない! まだ、死にたく……。
ただ、落ちる事しか出来ない少女のその瞳は、次第に光を無くしてゆく。
――もう、嫌だよ……
翼を無くした少女は、力なく地上へと落ちてゆく。
その瞳に映るものは徐々に大きくなり、町が、ビルが、マンションが、公園が、車が、人が。
――許して。どうか、どうか許してください。家に、ママとパパが居る、私の、家に帰り……