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第一話:もぬけの殻の学園長室と、絶対女王の凱旋

前作をお読みいただきありがとうございました! 本日からシーズン2が始まります!

最高学年になった生徒会室に桜舞う春!

……のはずが、頼みの最高権力者は領収書の山を残してトンズラ。

現れた新上司は、帝都を制圧して母校のトップに就任した最恐OG・セリア先輩でした!

「新学期の小手調べですわ♪」と突きつけられる徹夜確定の書類束!

優雅な高校生活の夢が秒速で粉砕される、波乱の幕開けをお楽しみください!


桜吹雪が舞う中、新学期の登校風景。

私は真新しい3年生の腕章を巻き、背筋をピンと伸ばして階段を上る。

すれ違う下級生や新入生たちから「あ、アイラ会長だ……!」「今年も凛としてて完璧……」と熱い羨望の眼差しを向けられ、完璧な「表向きの生徒会長スマイル」で会釈を返す。

階段の踊り場で、同じく3年生の学年章をつけたリサと合流。

「ふふん、見たリサ? 新入生たちのあのキラキラした目! これぞ学園の誇る完璧な生徒会長のオーラよね!」

リサは眼鏡を直しながら冷淡に言う。

「新入生たちの夢を秒で打ち砕かないよう、今年度は廊下を疾走したり、二階の窓から中庭へ飛び降りたりしないことを強く求めます」

「飛び降りないってば! もう私たち最高学年・3年生なんだから!」

本校舎3階、お馴染みの生徒会室のドアを開ける。

室内にはすでにタクト、ノア、セナが揃っている。タクトの胸元には後輩を表す「2本線」の学年章。

ノアはデスクの上にモニターを増設してカタカタとキーボードを叩き、セナは窓際でスマホをチェックしている。

部屋の中央、いつもセリアが優雅にお茶を淹れていた革張りソファの右端が綺麗に片付けられており、漂っていた独特の甘い薬品香が消えている。

「おはよ〜アイラちゃん、リサちゃん! 3年生進級おめでとー!」

「うす。会長たちもとうとう受験生っすね」

「タクトもノアも、2年生進級おめでとう! ほら、後輩ができたんだからもっとシャキッとしなさい!」

「へいへい。……にしても、セリア先輩が抜けると、この部屋やけに広く感じますね」

「だよね〜。いつもなら今頃、怪しげな紫の湯気立てながら『皆様、目覚ましに猛毒のハーブティーはいかが?』とかやってたのにさ」

私は空いたソファを見つめ、少し切なそうに目を細めてため息をつく。

3月末の卒業式、全校生徒の前で号泣しながらセリアに花束を渡した記憶を思い返す。

「やっぱり寂しいよね……。卒業式の答辞、セリア先輩あんなに凛としてて綺麗だったし……私、花束渡すとき鼻水出るくらい号泣しちゃったもん。『帝都へ行っても元気でいてくださいね』って……」

「貴女が式典の壇上で崩れ落ちて大泣きしたせいで、来賓の貴族たちが『生徒会長が愛の告白でもしているのか』とざわついていました。あれは明確に黒歴史です」

「あの日、会長の涙と鼻水でセリア先輩の卒業証書がふやけかけてましたからね。俺、後ろで胃が縮み上がってましたよ」

ノアは画面から視線を外さず言う。

「……ですが、セリア先輩の危険な劇薬の揮発成分が消失したことにより、室内の空気清浄度は前年比420%改善。精密機械の故障リスクも大幅に低下しています」

「ノア! そこはもう少し情緒ってもんを持ちなさいよ!」

私は生徒会室の中央でくるりとターンし、執務机に両手をついて身を乗り出す。

瞳をらんらんと輝かせ、「最高学年の抱負」を熱く語り始める。

「いい!? よく思い出してみて! この1年間、私たちの身に何が起きたかを!」

「怪しいエナジードリンク事件に始まり! 国家機関に目をつけられ! 私の実家の公爵家とお兄様が乱入してきて! 北方遠征で古代兵器を解体して! リサの妹ちゃんが来て! 旧校舎地下の演算炉を守って! 全校生徒を巻き込んだ選挙戦と迎撃要塞演習……! ぜーーんぶ、たったこの1年間に詰め込まれてたのよ!?」

タクトが若干引いたように言う。

「改めて並べると人間の送る高校生活のスケジュールじゃねぇな……」

「そうよ! だからこそ! あれだけの修羅場を1年で全部片付けた私たちなら、今年度こそは絶対に――『何事も起きない、完璧で優雅な生徒会ライフ』を送れるはずなのよ! トラブルゼロ! 始末書ゼロ! 魔法は完全封印! 平和な放課後を紅茶飲んで過ごすの!」

リサが手帳を開き万年筆を構えながら言う。

「その台詞、昨年度も何度か聞いた記憶がありますが。昨年度に生徒会が提出した始末書は計142枚。破損した校舎のガラス計18枚。もし今年度も同じペースで破壊工作に及んだ場合、調査書に『物理的破壊癖あり』と書かざるを得ません」

「書かせないわよ!? だから今年こそは平和にいくんだって!」

「あはは、アイラちゃんがそうやって意気込んでる時ほど、ヤバい事件が向こうから突っ込んでくるフラグなんだよね〜」

タクトは深くため息をつき、ポケットから胃薬を取り出して水で流し込む。

「……すでに嫌な予感しかしないっす」

カチ、カチと壁掛け時計が進み、朝礼の予鈴チャイムが鳴り響く。

「とりあえず、朝礼が終わったら新学期の年間予算申請と挨拶に学園長室へ行こう!」と私は元気いっぱいに笑う。

まだ誰も知らない――その学園長室がすでに「もぬけの殻」になっており、古狸が茶道具を持ってトンズラしていることなど……。


最上階の静かな廊下。予算申請書をクリアファイルに挟んで意気揚々と歩いてくるアイラを先頭に、生徒会メンバーがやってくる。

学園長室の重厚な扉の前に、ネクタイを緩めて額から脂汗を滝のように流している教頭を発見する。

教頭は震える指先で扉を指差し、「あ、あのお方は……我々を見捨てて……」とうわ言を呟いている。

「教頭先生? どうしたんですか、朝から幽霊でも見たみたいな顔して」

「ア、アイラ君……! 学園長が……学園長室が……! 私はもう胃に穴が開きそうだ……理事会になんと説明すればいいのだ……!」

「うわ、教頭の胃痛ゲージがMAX振り切れてる。嫌な予感しかしないっすね」

「取り乱していないで要件を述べなさい。私たちは年間特務予算の決済をいただきに来たのです」

「ちょっと失礼しますねー? じいちゃーん、入るよー?」

私は両開きの重厚な扉をぐいっと押し開ける。アイラが両開きの重厚な扉をぐいっと押し開ける。

部屋の中は日当たりがよく静まり返っているが、主である白髪の好々爺・学園長の姿はない。

ガラスのローテーブルの上、いつも置かれていた人間国宝級の茶碗や特製茶筅、茶釜が跡形もなく消え去っている。

その代わりに、テーブルの中央に鎮座しているのは、見事な行書体で書かれた一枚の半紙と、輪ゴムで束ねられた厚さ5センチはある領収書の山。

「……あれ? 留守? トイレかな?」

そこでセナがあることに気づく。

「いやいやアイラちゃん見て! おじいちゃんのお気に入りのお茶セット、ぜーんぶ綺麗サッパリなくなってるよ!」

ノアが机に近寄り、端末のセンサーで周囲をスキャンする。

「……残留魔力反応は極めて微弱。少なくとも数時間前には、トランク一つ分の私物とともに学園敷地外へ転移、あるいは車両で離脱した形跡があります」

「逃亡……ってコト!?」

「タクト、ち○かわになってます」

リサが眉間に深いシワを寄せ、ローテーブルの上の半紙をつまみ上げる。

冷え切った絶対零度の声で、書かれた内容を朗読する。

「『アイラ君、生徒会の皆の衆へ。昨年度はお前さんたちのおかげで、学園の心臓たる演算炉も無事に守り抜くことができた。お前さんたちの頼もしい成長を見届け、わしも心置きなく長年の悲願であった「全国名湯・茶の湯放浪の旅」へ出かけることにしたわい。後のことは全て、わしが太鼓判を押す優秀な後任に任せてある。学園の平和をよろしく頼むぞい』」

「はぁぁぁぁぁっ!? 旅立ち!? あの古狸、このタイミングでトンズラこいたの!?」

「全国名湯巡りって完全にただの温泉旅行じゃねぇか!!」

「……続きがあります。『P.S. 旅立ちに際して新調した茶器一式と、当面の逗留費の領収書を置いておく。生徒会予備費から適切に落としておいてくれ』」

「「「ふざけんなーーーーーーっっっ!!!!」」」

リサが領収書の束をめくる。

『最高級黒楽茶碗:金八十万テル』『極上宇治抹茶三年分:金三十万テル』『秘湯温泉郷・連泊前納金:金百五十万テル』……次々と飛び出す天文学的な数字。

リサはピキピキと眼鏡の奥の瞳が凍りつき、冷気が足元から噴き出す。

「……誰が生徒会費から落とすと言いましたか、あの生臭茶坊主め……! 私たちの血と汗の予算を、自分の道楽湯治に回すなど万死に値します……!」

「ヒエッ、リサ先輩の氷結が領収書を凍らせて粉砕しそう! 落ち着いてください、領収書割れたら経費精算できなくなります!」

私が頭を抱えて机に突っ伏す中、ノアが淡々と学園の理事会データベースへハッキング気味にアクセスする。

画面に「理事長代行 発令通知」の赤い公文書ポップアップが表示される。

「でもさでもさ、手紙に『優秀な後任に任せてある』って書いてあったじゃん? 教頭先生じゃないなら、誰が代わりに来るわけ?」

「……理事会の緊急決議データを確認しました。前学園長の突如たる無期限休職に伴い、今朝付けで『理事長代行』の就任人事が全会一致で承認されています」

「誰!? 魔法省の偉い人!? それともどっかの貴族のオジサン!?」

「いえ……発令された人事記録、氏名は――」

ノアが名前を口にしようとしたその瞬間。

シーンと静まり返った最上階の廊下の奥から、

――カツン、カツン、カツン。

リズム正しく、優雅で、それでいて心臓を冷たく締め上げるような、聞き覚えのありすぎるヒールの靴音が響いてくる。

扉の隙間からふわっと漂ってきたのは、かつて生徒会室を恐怖と覚醒で支配した、あの危険な「特製ハーブティー」の甘い香り――

アイラとタクトの背筋に同時に悪寒が走る。


私たちはノアの端末の画面を見ようと身を乗り出す。

その直後、開け放たれた扉の向こう、廊下の静寂を切り裂いて『カツン……カツン……』と寸分の乱れもないヒールの音が響く。

ふわりと室内に流れ込んでくるのは、かつて生徒会室で数々の実験と胃痛を生み出した、あの特製「覚醒脱力ハーブティー」の芳醇で危険なアロマ。

タクトが条件反射で「ヒッ!」と喉を鳴らし、両腕を交差させて半歩後退する。

「お、おい……この匂い……嘘だろ……!?」

セナも驚いて声を上げる。

「え、ちょっと待って!? アタシの鼻が狂ってなければ、これセリア先輩がいつも飲んでた『飲むと三日眠れなくなるやつ』じゃん!?」

「ま、まさか……幽霊!? 成仏できなくて母校に舞い戻ってきたの!?」

「勝手に元先輩を故人にしないでください」


逆光の中、優雅な足取りで学園長室の敷居を跨ぐ人影。

身に纏っているのは、制服ではなく、帝都社交界の一流仕立て屋が誂えた濃紺の高級テーラードスーツとタイトスカート。

艶やかな髪をなびかせ、手には愛用の細工扇子。

そして何より、左胸のポケットには桐花学園理事会の最高統制権を象徴する『黄金の理事長代行印』のブローチが燦然と輝いている。

扇子をパチンと閉じ、極上の微笑みを生徒会へ向けるセリア。

「皆様、ごきげんよう。新学期早々、ちっとも優雅じゃない奇声を上げていらっしゃること」

「セ、セリア先輩ーーーーーッ!?」

「あらアイラさん。学園内では『理事長代行』とお呼びなさいな。教頭があまりにも頼りないものですから、理事会の特別要請を受け、母校の舵取りを引き受けることにいたしましたの」

教頭は廊下でヘナヘナと座り込みながら言う。

「ひ、引き受けたというより……前学園長が消えた隙に、理事会の半数を裏錬金薬の弱みで掌握して電撃就任されたのでは……ひぃぃっ!」

セリアは教頭を一瞥もせず、扇子で口元を隠して微笑む。

「あら教頭先生、余計なおしゃべりをすると、今夜の晩酌のお酒が『真実しか話せなくなる自白剤』にすり替わりますわよ?」

「ヒイッ! し、失礼いたします!!」

と、教頭は猛ダッシュで逃亡した。

私は目を見開き、信じられないものを見る顔でセリアに詰め寄る。

タクトはすでに壁際まで後ずさり、できるだけ気配を消そうと縮こまっている。

「ちょっと待ってよセリア先輩!! 卒業式!! 3月末の卒業式はどうしたのよ!!」

「私、全校生徒と来賓の前で『先輩がいなくなったら寂しいですぅぅ』って鼻水たらして花束渡したのよ!? 答辞で先輩が『伝統を後輩たちに託します』ってウルッとしてたの、全部ウソだったの!?」

「ウソだなんて心外ですわ。あの時は確かに、しおらしく帝都の実家へ戻るつもりでしたもの。……ただ、春休みの間に帝都の社交界と裏錬金ギルドの勢力図を完全に塗り替えてしまいまして、少し退屈になってしまいましたの」

「春休みの2週間で裏社会の勢力図塗り替えてんじゃねぇよ!!」

「それにアイラさん? 貴女のあの涙と鼻水まみれの不細工なお顔、記念に魔導写真で最高画質保存してありますわ。理事長室のデスクに飾っておきましょうか?」

「飾るなァッ!! 返して私の感動の涙を返してーーッ!!」

ノアは静かに合掌しながら言う。

「……セリア先輩が最高権力者として戻ってきたことにより、生徒会の生存難易度は前年比800%に跳ね上がりました」

セリアは優雅に歩みを進め、主のいなくなった学園長の巨大な革張りエグゼクティブチェアの前へ。

スーツの裾を翻してゆったりと腰掛け、足を組んでローテーブルの上の領収書の山に細い指先を這わせる。

その仕草一つ一つが、前学園長以上の底知れない威圧感と支配力を放っている。

「ふふっ。タクト君、そんな壁際に張り付いてどうなさったの? 後輩の元気な挨拶が聞こえませんけれど?」

タクトは冷や汗ダラダラで直立不動だ。

「……し、新学期もお美しくあらせられます、理事長代行閣下」

「よろしい。……手の内も、弱点も、サボり癖も知り尽くした私がトップに立ったのです。前学園長のように、のほほんとお茶を濁して見逃してあげるなどという生ぬるい対応は期待しないでくださる?」

リサは眼鏡の位置を直し、冷静に一歩前へと出る。

「……元より覚悟の上です。それで代行、わざわざ帝都から母校の理事長代行に収まった真の目的は何ですか。単なる退屈しのぎでここへ座る貴女ではないはずですが」

セリアは瞳の奥に、冷徹で鋭い光を宿らせる。

「流石はリサさん、話が早くて助かりますわ。……ええ、もちろんございますとも。この平和な学園の心臓を狙う、下品な害虫どもを駆除するために参りましたの」

セリアがパチンと細い指を鳴らす。

部屋の影から現れた黒服の使い魔が、どさりと重々しい音を立てて、分厚い「機密調査ファイル」の束をローテーブルへ積み上げる。


セリアがデスクの引き出しから、帝都の最高級万年筆を取り出して指先で弄ぶ。

扇子を優雅に広げて口元を覆い、瞳の奥に「社交界の支配者」としての冷徹な光を宿す。

ノアがセリアから手渡された暗号化クリスタルを自前の端末にスロットインすると、空中へ帝都貴族たちの相関図と資金ルートがホログラムで一斉展開される。

「前学園長が茶道具片手に蒸発したという情報は、すでに帝都のハイエナどもにも伝わっていますわ。……彼らの狙いはただ一つ。学園の地下深くに眠る古代魔導演算炉の利権接収です」

リサは相関図を睨み、冷涼に眼鏡を光らせる。

「……なるほど。前学園長という絶対的な抑止力が消えた隙を突き、理事会の息のかかった貴族たちを抱き込んで、外から合法的に学園を買い叩く算段ですね」

「ええ。ですが、あの方々は致命的なミスを犯しましたの。……このわたくしが、前学園長以上に話の通じない『絶対悪』であることを計算に入れていませんでしたもの」

タクトは小声で言う。

「自分で自分のこと絶対悪って言っちゃったよこの元先輩……」

私は拳をポキリと鳴らし、好戦的な瞳で身を乗り出す。

「要するに、また学園を乗っ取ろうとする悪い奴らがいるってことでしょ!? 私とタクトで敵の本拠地にカチコミかけて、演武台ごと粉砕してやれば――」

セリアは扇子をパチンと閉じてアイラの額をペチリと軽く叩く。

「ダメですわ、アイラさん。暴力に頼るのは能がありません。相手は帝都の法と監査規約を盾に乗り込んできますのよ? こちらが手を出せば、それこそ相手の思う壺ですわ」

「害虫は、相手が最も自信を持っているルールの上で、法と権力と動かぬ証拠によって社会的・経済的にすり潰すのが一番美しく、効果的ですの」

「同感です。……で、具体的に代行は何をお命じになるおつもりですか」

セリアは極上の聖母のような微笑みを浮かべ、机の上に積まれていた厚さ20センチはある分厚いバインダーの束を、生徒会へ向けてドサドサッと押し出す。

書類が机を滑り、アイラとタクトの胸元へ直撃する。

「ふふっ。まずは新学期のウォーミングアップですわ♪」

「ノア君には、敵陣営が使うダミー企業3社の過去5年分の不正送金ログの復元。セナさんには、今朝の始業式に紛れ込んだ外部工作員の写真と身元特定。リサさんには、相手の違法監査を逆告発するための貴族院弾劾申請書の起草。そしてタクト君には、学園全周の防犯・偏向結界のパッチ当て直しをお願いしますわね」

タクトは白目を剥いて書類を抱える。

「ちょ……っ! 全周の防壁見直しって、桐花学園の敷地、東京ドーム何個分あると思ってんすか!? 死ぬ! 俺の魔力回路が過労死する!!」

ノアは目を伏せてボソッと言う。

「……ダミー企業の暗号、帝都銀行の特級プロテクトがかかっています。解析終了予測、最短でも18時間」

セナも思わずツッコミを入れる。

「工作員の特定って、新入生何百人もいるんだよ!? 無理ゲーすぎるっしょ!」

え、私は!?

「ちょっとセリア先輩! ……じゃなくて代行! 私への仕事は!? 私は何をすればいいのよ!?」

セリアは満面の笑みで、ひときわ分厚い『学園予算総括表』をアイラへ差し出す。

「アイラ会長には、前学園長が残していったあの天文学的な茶の湯領収書の穴埋めと、新学期の部活動予算案の再計算……全150ページ分を、明日の朝までに仕上げていただきますわ♪」

「明日の朝までぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?!?」


理事長室を追い出され、夕暮れの廊下を書類の山を抱えてフラフラと生徒会室へ連行される一同。

部屋の扉を開けると、朝の「優雅な最高学年ライフ」の面影はどこにもなく、一晩中明かりが消えないこと確定の修羅場が完成している。

アイラが生徒会長デスクに突っ伏し、両手両足をバタつかせて天を仰ぐ。

タクトは胃薬をボトルごと机にドンと置く。

「ほーら見ろ! 言っただろ! あのOGが一番エラいボスになって戻ってきた時点で、俺たちの高校生活は詰んでたんだよ!!」

リサは青筋を浮かべて万年筆を抜き、カチリと鳴らす。

「……文句を言っている暇はありません。明朝8時までに仕上げなければ、私たちの内申書が『職務怠慢』で代行印によって汚されますよ」

「うわーん! ギャルを徹夜でコキ使わないでー!」

ノアはすでにキーボードを爆速で叩き始めている。

「……コーヒーの淹れ直しを要求します。致死量手前のカフェインが必要です」

私は机をバンバン叩きながら絶叫する。

私の……私の優雅で! 平和で! 完璧な最高学年ライフはどこ行ったのーーーっ!!」


――桜舞う春の新学期。

最上級生になった私たちの放課後は、前シーズンよりも遥かに凶悪な絶対女王の手によって、

やっぱり、ちっとも、これっぽっちも平和じゃなさそうだった――


すみません新シリーズ更新までに一ヶ月もかかってしまいました、懺悔。

違うんです、気分転換にネイルをしたら爪が長すぎてタイピングが一切できず、書くどころではなくなってしまい、完全に更新が停止してしまいました。すみません……

挙句小指のスカルプが剥がれて死にました。ありがとう絆創膏。


と言うわけで新シリーズ開幕です!絶対女王セリアの君臨です。

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