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『ゆめいろのメダルと小さな手』

作者: 城間 蒼志
掲載日:2025/12/04

この物語は、「やさしさとは何だろう?」という問いから生まれました。誰かを助けたいと思っても、「よけいなおせわ」「いい子ぶっている」と言われてしまうことがあります。そんな言葉を向けられると、胸が痛くなり、本当の気持ちを見失いそうになります。しかし、やさしさは形ではなく “心の向き” です。相手の気もちを感じてそっと手を差しのべること。それは目立たなくても、声にしなくても、確かに届く力があります。あかり、さき、たいが、ゆうな—一人ひとりが悩みながら、相手の立場や気持ちに近づいていく姿を描くことで、やさしさの多様な形を知ってほしいと思いました。この物語が、読んでくれたあなたの日常にも、小さな光をひとつ灯すきっかけになれば幸いです。

『ゆめいろのメダルと小さな手』


第一章 あかりのたからもの

冬のまちは、すこしだけさむいけれど、よく日はさしていました。

 空はうすい青で、白い雲がゆっくりと流れていきます。

 三年三組のきょうしつで、わたし――あかり――は、じっと外の赤い花を見ていました。

その花は「かんつばき」といって、冬なのにがんばってさく花です。

 まわりの木は、葉っぱがすくなくてさびしそうなのに、その木だけは、寒い中でもしっかり立っていて、ポツンと赤い花をつけていました。

(寒いのに、えらいな……)

 そう思うと、わたしの心も、すこしだけ元気になりました。

この日は、さきのあしがいつもより痛い日でした。

 朝、げた箱のところで会ったとき、さきはちょっとだけ顔をしかめていました。

「おはよう、さき」

「おはよう……あかりちゃん。今日、あしが、ちょっと痛いかも」

さきはそう言いながらも、かるくえがおを見せてくれました。

 さきは生まれつき、あしに力が入りにくく、歩くのがゆっくりです。

 休み時間にみんなが走り回るときも、さきは自分のペースで、トコトコ歩いています。

でも、わたしはさきを「かわいそう」と思ったことはありません。

 むしろ、「がんばっているんだな」と、そっと心の中でおうえんしてきました。

 ただ、「がんばっているさきのそばにいたい」と、いつも思っていました。

プリントをくばるとき、わたしは自然にさきの分を取りに行きました。

 体が勝手に動いた感じで、「あ、行かなきゃ」と思ったときには、もう立ち上がっていました。

そのとき、うしろから声がしました。

「またあかりがやってる。いい子ぶってるだけじゃん」

ゆうなが言いました。

 近くにいたれんも、口に手をあてて、クスクス笑っているようでした。

胸がちくっとしましたが、わたしは気にしないふりをしました。

 顔があつくなるのを感じながらも、「聞こえてないよ」という顔をしようとがんばりました。

だって、心の中に おばあちゃんの言葉があったからです。

『いいことをしたら、神さまがごほうびをくれるよ。

 あかりは、人の手をにぎれる子だよ』

おばあちゃんが言うときの声は、あたたかくて、お茶のにおいまで思い出せそうでした。

 おばあちゃんはもう天国にいますが、この言葉は、わたしのたからもののように心でひかっています。

 つらいときも、さびしいときも、この言葉を思い出すと、胸の中に小さなひかりがともる気がするのです。

ほうかご、さきとゆっくり歩いて帰りました。

 通学路の木のえだから、すずめの声がきこえてきます。

「急がなくていいよ」

「うん、ありがとう」

さきの声はやさしくて、冬の風みたいにすんでいました。

 足音はゆっくりだけど、いっぽいっぽ、ちゃんと前に進んでいます。

 わたしはその歩幅に合わせて、となりを歩きました。

いえに帰ってから、わたしはランドセルをおろし、まっ先に机のひきだしをあけました。

 そこにあるのは、おばあちゃんがくれた 七色のリボン。

 小さな箱の中で、きれいにたたまれたまま、ずっと大事にしまってあるリボンです。

 光にあてると、にじのように光ります。赤、青、きみどり……見るたびに、少し気もちが明るくなります。

“あかりは、だれかをてらす光になりなさい”

おばあちゃんの声が聞こえた気がして、

わたしは小さく心の中で言いました。

――わたしは、さきのそばにいよう。

――これからも、ずっと。


 第二章 「よけいなおせわ」ってなに?

次の日の算数の時間。

 時計のはりが、チクタクと音を立てている中で、先生が黒板に三角形をえがいていました。

「ここが“そこ”で、ここが“高さ”ね」

わたしはえんぴつをにぎりながら、さきをちらっと見ると、さきはまじめにノートを書いていました。

 前の方をしっかり見つめる目は、とても静かで、でも強そうに見えました。

(今日もがんばってるな)

そう思いながら、ノートにもどると、先生がプリントをくばりました。

 前の席の子から手わたしされて、わたしのところに何まいか重なって届きます。

わたしはまた自然に立ち上がって言いました。

「さきの分もっていくね」

「ありがとう」と先生。

 先生の声は、いつものようにやさしく聞こえました。

でもそのとき、また声がしました。

「いい子ちゃんアピール?」

「さき、自分でできるよね」

ゆうなとれんの声でした。

 ひそひそ声のつもりみたいだけど、わたしにははっきり聞こえました。

耳があつくなり、胸がしめつけられるようでした。

 足のうらの方から、じわっと冷たいものが上がってくる気がしました。

(ちがうのに……。わたし、見せつけたいんじゃないのに)

席にもどると、たいがが言いました。

「さきだって、自分でやりたい時もあるんじゃねーの」

たいがは、えんぴつをクルクルまわしながら、窓の外を見ていました。

 からかっているような声ではなかったけれど、その言葉も、すこし痛かったです。

わたしは、机のうえのプリントをじっと見つめました。

 黒い文字が、ぼやけて見えるような気がしました。

昼休み。

 クラスの半分くらいの子が校庭に飛び出し、ボールの音や笑い声がきこえてきます。

 わたしは教室にのこって、ノートをながめていましたが、頭にはさっきの言葉がグルグル回っていました。

そこへ、さきが来て、小さい声で言いました。

「あかりちゃん、プリントありがとう。さっきもたすかったよ」

さきは、いつものように、ふわっとえがおを見せました。

 そのえがおを見ていると、胸のモヤモヤが少しだけ軽くなる気がします。

わたしは思い切って聞きました。

「ねえ……わたし、手伝いすぎかな?」

自分で言いながら、心臓がドキドキしてきました。

さきはすこし考えて言いました。

「わたし、できることは自分でしたいよ。

 “自分でもできた”って思えると、うれしくなるから」

「うん……」

「でも、むずかしい時に助けてもらえるのは、すごくうれしいんだ。

 あかりちゃんが、『今かな?』って思って、そっと手を出してくれるのが分かるから」

そして、にっこりして言いました。

「“全部やってもらう”のと“ほんとうにこまってる時に助けてもらう”のはちがうよ。

 あかりちゃんのやさしさは、わたしにちょうどいいの」

胸の中がふわっとあたたかくなりました。

 さっきまで、石をつめこんだみたいに重かった心が、少し軽くなった気がしました。

「そっか……。よかった」

わたしがそう言うと、さきは、「うん。わたし、あかりちゃんのこと、たよりにしてるよ」と、はずかしそうに笑いました。

 その笑顔を見て、わたしもつられて笑ってしまいました。

第三章 お母さんのことば

いえに帰ると、お母さんが夕ごはんを作っていました。

 台所からは、じゅうじゅうという音と、おみそ汁のいいにおいがしてきます。

「ただいまー」

「おかえり。今日は寒かったでしょ? 手、冷たくない?」

お母さんは、にこにこしながらふり向きました。

 でも、わたしはなんとなく元気が出なくて、小さな声で答えました。

「うん……ふつう」

ランドセルをおろして、ダイニングのいすにすわると、思わず「ふう」と息がもれました。

「ねえ、お母さん。“よけいなおせわ”ってなに?」

お母さんは手を止め、すこしびっくりした顔をしてから、わたしのとなりにすわりました。

 まな板の上には、まだ切りかけのにんじんがのっています。

「むずかしいことばを聞いてきたわね。だれかに言われたの?」

「うん……。わたし、さきにプリントを持っていったら、“いい子ぶってる”とか“よけいなおせわ”って……」

言っているうちに、目の中があつくなってきました。

 泣きたくないのに、なみだがじわっとにじんできます。

お母さんは、わたしの話をさいごまで聞くと、静かにたずねました。

「さきを助けるとき、あかりはどんな気もちなの?」

「さきがこまってるかも……って思うと、体が動くの。

 “助けたいな”って思うと、気がついたら立ち上がってる感じ」

「いい子ぶろうとしてるの?」

「ちがうよ。

 そう見えるのかもしれないけど、そうじゃなくて……ただ、そうしたいだけ」

お母さんはやさしくわらいました。

 目が、「わかってるよ」と言っているみたいでした。

「それなら、それはあかりの“やさしさ”よ」

そしてゆっくり話してくれました。

「“よけいなおせわ”とは、相手がしてほしくないのに、むりにしてしまうこと。

 『自分でやりたいのにな』って思っているのに、聞かずに手を出しちゃうことね」

お母さんは、テーブルの上にペンを立てて、コトコトと軽く動かしながら続けました。

「でも、あかりはさきちゃんの気もちを見ているよね?

 さきちゃんが本当にこまっている時を見つけて、そっと助けているんでしょう?」

「うん……。さきが痛そうだったり、あわてていたりするときに、手伝いたいって思う」

「それは“そばによりそう”ってことよ」

「よりそう……?」

わたしは、聞きなれない言葉をゆっくりくりかえしました。

「そう。相手の気もちを考えて、そばに立つこと。

 『どうしたいかな』『今は大じょうぶかな』って想ぞうしながら行動することよ。

 あかりは、それができる子なのよ」

お母さんの声は、あたたかいスープのようにしみわたりました。

 冷えていた心の中まで、じんわりあたたかくなっていく気がしました。

「それにね、人は、うらやましい時や、自分ではうまくできない時ほど、きつい言い方をしてしまうこともあるの」

「うらやましい時……?」

「『あんなふうにやさしくできたらいいな』って心のどこかで思っている時に、『いい子ぶってる』って言ってしまうこともあるのよ」

ゆうなの顔が頭にうかびました。

 いつもはハッキリものを言って、自信ありそうに見えるけれど、もしかしたら心の中ではちがう気持ちをかかえているのかもしれません。

「ねえ、お母さん。わたし、このまま、さきのこと、手伝っていてもいい?」

わたしがたずねると、お母さんはすぐに答えました。

「いいわよ。あかりが“そうしたい”と思うならね。

 お母さんは、あかりの心を信じているから」

その言葉を聞いて、胸の中で七色のリボンがふわりとゆれた気がしました。

 さっきまでくもっていた心に、また光がさしこんできたようでした。


第四章 たいがの本当の気もち

休み時間。たいがは紙ひこうきをおっていました。

 黒板の前の机の上で、真けいな顔をして紙を折っています。

「たいが、それじょうずだね」

「べつに」

たいがはそっけなく言いましたが、折り方はすごくきれいでした。

 折り目はピシッとそろっていて、先っぽもとがっていて、今にも飛び出しそうです。

「わたしにも教えてくれない?」

「しょうがねーな。ここ、ちゃんと半分に折れよ。ずれっと、まっすぐ飛ばねーからな」

たいがは、ゆっくり手本を見せてくれました。

 口はぶっきらぼうだけど、教え方はていねいでした。

「昨日のことだけど……わたし、手伝いすぎかな?」

紙を折りながら聞くと、たいがはしばらく目をそらして言いました。

「さき、がんばってるじゃん。

 全部助けられちゃうと“できた!”って気もちがなくなるんじゃねーかなと思うこともある」

たいがは紙ひこうきをにぎりしめました。

 その手は、すこし汗ばんでいるように見えました。

「オレ、前に、けがした子を笑ったことがあるんだ。

 廊下でこけたとき、『大げさだな』って。

 でも、その子、骨がおれてたんだって。

 その時……助けてやればよかったって、ずっと思ってる」

たいがの声はふるえていました。

 いつも大きな声でわらっているたいがが、こんな声を出すのを、わたしは初めて聞きました。

「だから、今はどうすればいいか分かんねぇ時がある。助けた方がいいのか、“自分でできる”って気もちを守った方がいいのか…」

わたしはそっと言いました。

「たいがって、ほんとうはやさしいよ」

「は!? なんだよそれ!」

たいがはまっ赤になりましたが、どこかホッとしているようでした。

 耳の先まで赤くなっているのが、ちょっとおかしくて、でもかわいくも見えました。

「たいがは、ちゃんと人の気もちを見てるから、まようんだよ。

 気にしてない人は、きっとそんなこと考えないもん」

「……さあな。でもさ。あかりがさきのそばにいるの、オレはけっこう安心するし」

たいがは、わざとらしくあくびをしながら言いましたが、その目はやさしかったです。

そう言うと、たいがは紙ひこうきを空にむかって飛ばしました。

 紙ひこうきは、まっすぐきれいに飛んでいきました。

 黒板の前から後ろのドアの近くまで、スーッと白い線をえがいたように感じました。

(たいがも、ずっと心にしまっていたことがあるんだ……)

わたしは、自分だけがなやんでいるわけじゃないと分かって、少し安心しました。


第五章 さきの手術とクラスの手紙

ある日の朝、先生が黒板の前に立って言いました。

「さきちゃんは、来週から入院して足の手術をします」

教室がしんとなりました。

 さっきまでガヤガヤしていた声が、ピタッと止まりました。

「手術って、こわいかな」

「大丈夫かな」

友だちのひそひそ声が聞こえました。

 わたしの胸がぎゅっとなりました。

 自分の心ぞうが「ドクン、ドクン」と大きな音を立てているように感じました。

さきは、すこしうつむいていましたが、先生の話を静かに聞いています。

「手術はね、じょうずなお医者さんがしてくれます。

 少しこわいかもしれませんが、さきちゃんの足が、今より楽になるための大事な手術です」

先生は、みんなの顔をゆっくり見わたしました。

「みんなで“がんばってね”の手紙を書きましょう」

先生の言葉に、みんなは色のついた紙を取り出しました。

 ペンケースから、色ペンを出す子もいれば、かわいいシールを用意する子もいました。

 教室の中に、少しずつあたたかい空気がもどってきます。

でも、たいがは手が止まったままです。

 白い紙の上を見つめたまま、ピクリとも動きません。

「書かないの?」

わたしがとなりからのぞきこむと、たいがは、くちびるをかんだまま言いました。

「……何書けばいいか、わかんねえ」

たいがは、いつもより弱い声でした。

 目も、いつものようにギラギラしていなくて、どこか不安そうでした。

「上手じゃなくていいよ。たいがの気もちで書けばいいよ。

 “がんばれ”だけでも、たいがが書いたら、それだけで力になると思う」

するとたいがは、ゆっくりペンをにぎりました。

 考えこみながらも、少しずつ文字を書き始めました。

ゆうなも、しばらく迷っていました。

 紙の上にペンを近づけては止め、また少し書いては消して……をくり返しています。

「わたし……あかりにきつく言ったし……」

ゆうなは、小さな声で言いました。

 いつもの元気な感じはなくて、目も下を向いたままです。

「大丈夫。ゆうなの言葉なら、さきはうれしいよ。

 ゆうな、前にさきと絵をいっしょにかいてたでしょ? あのとき楽しそうだったよ」

わたしがそう言うと、ゆうなははっとして、ペンを動かし始めました。

「……そっか。じゃあ、ちゃんと書く」

やがて、クラスぜんいんの手紙がそろいました。

『さきちゃん、大好きだよ』

『また一緒にあそぼうね』

『がんばれ!』

『病院でも、わらっていてね』

あたたかい言葉でいっぱいでした。

 紙の色も文字の色も、それぞれちがっていて、見ているだけで胸がじんとしました。

わたしも七色のリボンを思いながら書きました。

『さき。こわくても大丈夫。

 わたしはずっとそばにいるよ。

 またいっしょに、ゆっくり歩こうね』


 さいごに、小さくにじの絵をそえて、ペンを置きました。


第六章 ゆめいろのメダル

手術の日。

 わたしは朝からそわそわしていました。

 授業中も時計ばかり気になって、何度も時間を見てしまいました。

(今ごろ、手術かな……)

(痛くないといいな……)

心の中で、何回も何回も「がんばって」とつぶやきました。

その日の昼すぎ、先生のスマホが、ピロン、と音を立てました。

 先生は画面を見て、ニッと笑いました。

「みんな。さきちゃんのお母さんから、連らくがありました。

 手術は、うまくいったそうです。さきちゃん、とてもがんばったそうですよ」

「よかった!」

「やったー!」

「さき、えらい!」

クラスのみんなは、いっせいによろこびました。

 わたしも、目に涙があふれそうになりながら、「よかった……」と小さくつぶやきました。

数しゅう間後、さきが学校に来る日がやってきました。

 朝から、クラスのみんながそわそわしています。

「今日だよね?」

「来るかな?」

「何て言おうかな」

わたしの心ぞうも、ドキドキと早く打っていました。

 手のひらは、少し汗ばむほどでした。

教室のドアがゆっくりあきました。

「ただいま……」

さきは前よりすこしやせていましたが、えがおはとても明るかったです。

 顔色も思ったよりよくて、ほっとしました。

「おかえり!」

「元気そうでよかった!」

「ムリしないでね」

みんながいっせいに声をかけます。

 さきは、目をうるませながらも、「ありがとう」と何度も言っていました。

たいがはてれくさそうに言いました。

「……がんばったな」

そのひとことに、たいがの気もちがつまっているのが分かりました。

「ありがとう、たいがくん」

さきは、ていねいに頭を下げました。

ゆうなもすこしはずかしそうに言いました。

「手紙、読んでくれた? また一緒に帰ろ」

「うん。ぜんぶ読んだよ。泣きそうになるくらいうれしかった。また一緒に帰ろうね」

さきは涙をうかべて言いました。

 その涙は、かなしい涙ではなくて、うれしい涙でした。

そのとき、わたしはポケットから七色のリボンを出しました。

 ドキドキしながら、小さな箱を開けます。

「さき。この七色のリボンはね……おばあちゃんからの宝物なんだ。

 でも、いまはさきにわたしたいの」

「えっ……でも、あかりの大切な……」

「ううん。これはね、さきががんばったからの“ゆめいろのメダル”だよ。

 こわい手術をのりこえたことと、前を向いたことへのメダル」

そう言って、リボンをさきの手にのせました。

 さきの手は、少しひんやりしていましたが、ぎゅっとリボンをにぎりました。

七色の光が、さきの涙でキラキラ光って見えました。

 まるで、本物のメダルみたいに、強くまぶしく感じました。

そのとき、わたしの心におばあちゃんの声がひびきました。

“あかり、やさしさはね、めぐりめぐって光になるんだよ”

教室いっぱいに光が広がっていく気がしました。

 みんなの笑顔も、その光の中で、いっそう明るく見えました。

(やさしさって、たぶんこういうことなんだ)

わたしは、胸の中でそっとつぶやきました。

 見えないけれど、心の中に、にじ色のメダルがひとつ、カランとおちたような気がしました。


 




あとがき

このお話は、「やさしさってなんだろう?」という気もちから作りました。

 ときどき、人にやさしくするときには、

「いい子ぶってる」

「よけいなおせわだよ」

と言われてしまうことがあります。

 そんな言葉を聞くと、心がチクッとしたり、「もうやさしくしない方がいいのかな」と

思ってしまったりします。

でも、“心から助けたい”と思ってすることは、

 どれもほんとうのやさしさです。

 うまく言えなくても、言葉がすくなくても、気もちがそこにあれば、そのやさしさはきっと相手にとどきます。

あかりやさき、たいが、ゆうなのように、

 それぞれの思いや気もちがあってもいいのです。

 人はみんなちがうからこそ、いろいろな形のやさしさがあります。

だれかを思う気もちがあれば、そのやさしさは、まわりまわって、いつか自分のところにも帰ってきます。

 それは、目には見えないけれど、心の中で光る“ゆめいろのメダル”のようなものかもしれません。

このお話を読んで、

「わたしも、ちょっとやさしくしてみようかな」

「だれかのそばに、そっとよりそってみようかな」

と思ってくれたら、とてもうれしいです。


―― 作者 城間しろま 蒼志そうし


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