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君と奏でる旋律  作者: mone
1 はじまりの音
1/2

.

譜面台に置かれた楽譜の上を、指が正確に走る。

教室に満ちる音は、まだ未熟ながらも真っ直ぐで、どこか硬さを残していた。





――もう少し、柔らかく。






心の中で自分に言い聞かせながら、菊池悠太は最後の和音を叩いた。

音が空気の中に溶けていくのを確かめるように深く息をつく。




教授からの講評を受け、楽譜を鞄に収めると、夕暮れが差し込む廊下を歩き出した。

授業を終えた学生たちのざわめきが背中を押す。

練習室の鍵盤の感触がまだ指先に残っていた。




校舎を出て、駅前へ続く道を歩く。

一週間の疲れが少しずつ抜けていく時間






――けれど、その時だった。





人混みの中から、澄んだ旋律が耳に届いた。

雑踏のざわめきに負けない、不思議に真っ直ぐな音。




広場の片隅に置かれたストリートピアノ。

そこに座っている女性の姿が目に入った。





細い肩が小さく揺れ、指先は迷いなく鍵盤を跳ねる。

流れているのは《きらきら星変奏曲》。

誰もが知っているはずの旋律が、まるで違う世界の物語のように響いていた。





悠太は足を止めた。

その音色に、理由もなく心を掴まれていた。


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