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再会と覚悟

鉄と魔力が交差する音が、施設の至る所で鳴り響いていた。

破られた結界、蒸気のように立ちこめる魔素、そして──


リィナの目の前に、浮かぶ一本の杖。


「来た……本当に……来てくれた」


彼女の声は震えていた。恐怖ではない。希望の震えだった。


杖がゆっくりとリィナの手元へと降りてくる。


「そっちが、お迎えに来るなら──俺も奪い返すだけだろ?」


どこか冗談めいた声。でも、その奥には確かな決意があった。


リィナの手が、レンを握った瞬間。

施設全体の魔力が跳ね上がる。


「魔力接続、再起動──」


「──システム、完全連携!」


光の奔流が、ふたりを包み込んだ。


====


廊下を駆けるリィナの姿は、もはや数日前の彼女とは違っていた。


封印されていた魔力が戻り、杖との共鳴が再び形を取る。


「前より、反応速度が上がってる。お前、何したんだ?」


「……わたし、自分の魔力と……あなたの声を信じるようにしただけ」


レンは微かに笑う。


「成長したな、お嬢ちゃん」


「……うるさいです」


その口調に棘はない。ただ、少しだけ──照れくさそうな温度がこもっていた。


====


突如現れたふたりに、魔導協会の護衛たちが次々に立ちふさがる。


「再拘束しろ! 特異対象は逃がすな!」


「構わん。ぶち抜くぞ!」


レンの指示で、魔力が拡張展開される。

床一面に浮かぶ連詠陣──その中に、リィナが詠唱を走らせる。


「《響け、蒼の意志──》」


「《重ねよ、光の輪──》」


「《魔術式・共鳴展開──風蓮陣》!」


全方位から迫る魔導士たちの術を、逆に飲み込み、解体、打ち砕く。


「なんだ、あの魔法……!?」


「喋る杖と共鳴詠唱!? そんなの理論上──!」


「理論を超えるのが、こっからだろ」


レンの声が響くたびに、リィナの魔法が鋭く、しなやかに、そして強く撃ち込まれる。


──二人でなら、できる。


それは奇跡ではない。訓練と信頼の果てに、生まれた意志の融合。


====


ようやく施設の外に出たふたり。

朝焼けの空が、ゆっくりと広がっていく。


「はぁ……逃げ切った?」


「いや、まだだ。これからだ。協会も本気を出してくる。俺たちを危険存在と見なした」


リィナは小さく頷いた。


「でも……大丈夫。だって、私は──」


言いかけて、言葉を止める。


レンが先に言う。


「お前ひとりでも、魔法は使える。俺がいなくても、もう大丈夫なはずだ」


リィナは、ゆっくり首を振った。


「……違う。私は、魔法を使えるようになった。でも、あなたとだから、できたの」


「……リィナ」


「私には、もうあなたが必要なんです。…杖、じゃなくて、レン」


その瞬間、レンの核にまたひとつ光が灯った。

強く、深く、温かく。


「ったく……泣くぜ、こんなん」


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