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魔導核の真実

夜の静寂を裂いて、一人の男が歩く。


ゼノ・グレイヴ──

仮面の奥の眼差しが、確かな確信を宿していた。


彼が向かう先、それはかつて封印された古代遺跡。

風蓮杖──レンの本来の眠りの地。


そしてその中央には、既に鍵が座していた。


リィナ・フェイルノート。

彼女の魔力が、扉を開けようとしていた。


====


「お前、ここがどこだかわかってるか?」


ゼノの声に、リィナは答えない。

代わりに、レンが語った。


「ここは……俺が目覚めるずっと前、最後の術式が放たれた場所」


「そう。魔法文明の終焉をもたらした、風蓮の核──お前そのものが、災厄だったんだよ」


ゼノが投げつけた言葉は、刃のようだった。


「喋る杖? 笑わせるな。お前は人の姿だった時よりも、遥かに危険だ」


「……知ってたのか」


「当然だ。この遺跡は我々協会が管理していた。魔導核兵器としてな」


リィナの目が見開かれる。


「レンが……兵器……?」


「そうだ。元は一人の少年だった。理論だけで古代魔法を組み上げ、核として封印された。その魔力の奔流は、都市一つを吹き飛ばす威力がある」


ゼノは淡々と語る。


「だが不完全だった。鍵が足りなかったのだ」


「鍵……」


「お前だ、リィナ。お前の制御不能な魔力こそ、風蓮核の起動条件だった」


空気が凍る。

リィナは小さく、そして確かに震えた。


「じゃあ、私が……レンを起こしたのは……」


「そう。偶然などではない。お前たちは、最悪の出会いだったのだよ」


====


レンは、静かに言葉を発した。


「……そうだな。オレは、多分……世界を壊せる」


「じゃあ……どうするの? 私……あなたを手放さないと、いけないの……?」


リィナの目に、涙がにじんだ。


レンは、そっと語る。


「俺はもうただの杖じゃねぇ。お前の相棒だ」


「……でも」


「リィナ。お前がいなきゃ、俺は目覚めなかった。でも、お前がいたから──俺は、誰かのために使いたいと思えたんだ」


ゼノが術式を構えた。


「ならば、終わらせろ。封印しろ。その杖を!」


====


リィナの手に力がこもる。


「……壊さない。私は、もう壊したくない。

私は創る。あなたと一緒に未来を!」


レンの魔力が暴走を始める。


だが、リィナがそれを包み込むように詠唱を重ねた。


「《全制御・共鳴陣──展開開始》!」


ゼノの攻撃が襲いかかる──が、その前に、巨大な魔法陣が二人を包み込んだ。


リィナとレンの魔力がひとつになり、光の奔流を放つ。


「そんな……魔導核が、共鳴で……!? 完全制御だと!?」


「俺たちが最悪だった? ──違うな」


「お前らが勝手にそう決めただけだ」


光が全てを包み込み、ゼノの攻撃をかき消した。


====


遺跡の中心部。

ふたりは静かに寄り添っていた。


「リィナ……もし、俺が暴走したら」


「止めます。絶対に」


「そうか……なら、安心だ」


ふたりの間に、かすかに笑いが生まれる。


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