この世に毎日勇んで進む人なんているの?
面長でつり目だけどかわいいメイクがしたくて、
前髪を作ったはいいけどサイドの毛を作るはっちゃけさはなくて、本当は下ろして巻き髪をしたいけど
簡素にまとめてて、新しい恋を始めたいのにまだその時期じゃないって渋ってる。
学生気分な時もあるのにふと出てくる自傷はオバさんっぽい。絶賛精神的モラトリアム延長中。
今の仕事でいいのかなって思いつつ、転職する勇気と体力はない。
全部中途半端、あぁ恋がしたい、恋をしたら、恋に恋焦がれたら私は何か変わるはず。
学生時代、好きだった人がいた。私にとって唯一無二な人で彼を見てはため息をついた。
見た目、性格、人間関係、どれをとっても好きと
信じていたけど不意に見せる悟った顔が
好きだった。やけに人生を見据えてる "目"
その目には何が映っていたの?一生帰ってこない
問いを今でも問い続ける。
もはや誰か私のことを叱って欲しい。
"過去に囚われるな"とか、
"賞味期限切れのアイスを食ってるのと同じ"って。
あ、アイスには賞味期限とかないんだっけ。
とにかくこんなくだらないことを考えてしまう
くらいには今の生活に満足していない。
誰か私を救って…。
どこへでもいいから連れてって…。
「これくらいの天気って曇り?それとも晴れ?」
「うーん…私的には晴れですかね」
「えぇこれ、晴れ?俺的には曇りだな」
「まぁ確かに午後から雨予報ですしね」
つまんなこの会話、上司と天気の話するくらいなら
水族館のトドが水面に落ちそうになってる動画を見てた方がマシだ。
「あ、今度会社の打ち上げあるけど行くよね?」
「予定が合えば行けます」
「日曜だから空いてるでしょ。よろしくね」
「村上さんー、ここって…」
「はいはい、今行きますよっと。ってことで」
私の上司はデリカシーという存在を多分知らない。 性格が悪いわけではない、ただ失礼なだけ。
私はここ数年自分にそう言い聞かせている。
ハラスメント程重大なものじゃないし、言われて
6秒くらいはムカつくけど怒りに任せて逆ギレ
するほどじゃない。
例外なく、今回も怒りを鎮め手帳を開いた。
「空いてる」
私はやけに独り言がデカい。
なんでこうゆう時に限って空いてるの?
もっと都合のいいように頑張れよ。予定側が!
仕方ない、行くとしよう。もしかしたら新たな恋
が始まるかも知れないし…。手帳には真っ白が
大半だが、誕生日を細かく書く癖があり彼の
誕生日も書いていた。もう何年も会ってないのに、
「どこ座る?」
「あ、私はどこでもできれば端がいい…」
「おお、浅原!来たなあ!こっちだ」
「あっ…えっと、はい」
「一杯目はビールで乾杯だよな」
「もう、村上さんったら今はそうゆうの
ハラスメントになっちゃいますよ笑」
「え、そうなの。随分生きづらい世の中だな笑
じゃあおじさんは引っ込んどくよ笑」
ていうか、時代の流れを感じるのであれば大人しく従えよと私の中のデビル浅原は感じてしまう。
まあおじさんには過酷な試練なのだろう。
しかし、一杯目はビールでしょ地獄から解放されて
本当に良かった。それで悠々と度数の低いお酒を
飲める。普段は協調性を売りにしてるくせに
こうゆう時だけマイペースを要求するのはワガママ
かも知れないと一瞬思ったがそもそもお酒のペース
合わせるってなんだよ。小学生でやる
マラソン大会のしょうもない約束じゃないんだから。
「あ、家の加湿器の電源消したっけ」
「ん?浅原さんどうしたの?」
「いや、なんでもないです。みなさん、大分
酔ってるなって」
もう、新卒からずいぶん経つが居酒屋の雰囲気を
好きにはなれなかった。私は元からアクティブじゃないから仕方ない。多分最近流行りのmb…
てぃーけーじー…?いや、違うな。まあなんでも
いいか、それをしたら真っ先にインドアって
出るだろう。今の人たちは他人の性格を知って
どうするんだろう?会話を広げるため?
恋人探し?若者の考えは単純なようで難しい。
というか、加湿器の電源!どうしよ…。万が一
火事になってたら今後の人生終わりだし、でも
わざわざ家に戻って電源を消してたら徒労になる。
早く飲み会終われ!!もうそう願うしかない。
それか二件目に行け!私は丁度よくそこで抜ける!
「そろそろお開きにする?」
「ああ、もうそんな時間か。じゃあ二件目
行ける人行こうか!!」
ナイスタイミング!!よくやった!神様!アーメン
「二件目、どこがいいの?」
「あの私、用事あるので帰ります…」
「浅原ぁ〜!お前まだいけるだろう??」
出たな、嫌な上司村上!お前には負けない!!
「いや、あの、予定があって…」
「予定なんて断ればいいだろう、ほら二件目だ」
こいつ、やはりデリカシー皆無だ!
「断るとか断らないとかではなくてですね…」
「お前まだ飲み足りないだろ?ビールも飲んで
なかったし、一緒に飲むか?笑」
待って私のことをずっと見てたってこと?
冬だからという理由だけでは収まらない悪寒がする
「…」
流石の私ももう反論する勇気がなくなってきた。
「僕も二件目行けないです。ごめんなさい」
「藤村くんも帰るの?」
「はい、家帰って洗濯したいので」
「笑笑なんだか藤村くんっぽい笑」
藤村…?別の部署にいたような気がする
あと、この声、この背丈、どこかで…。
「浅原さん?は家、駅方向ですか?」
相田くんだ、私が高校時代恋に恋焦がれた男の子
なんで藤村???苗字変わった?結婚?
でも男の人が苗字変えることって結構稀じゃ??
あ、でも今は多様性の時代だからそんなこと
言っちゃいけないのか、てか!!そんなことより
同じ会社だったの???
「…?浅原さん??」
「あぁ、えっと…あ駅です!駅方向だす!あっ
間違えた!!…です!」
「じゃあそこまで行きましょう」
これって奇跡の再会?もしかしたら恋の始まり?
今まで必死にいやそんな必死じゃなかったけど
仕事頑張ってきたご褒美かも!神様ありがとう!
これからお祈り毎日しようかな。
駅までの帰り道私は大地を踏みしめて歩いた。
決して転ばないように、勇んで進んだ。
私の人生はここから再び始まるのかもしれない。
駅までの数分間、2人きりのドキドキ。
浅原は藤村(旧相田)との時間を存分に楽しむ。
一方藤村はそっけない態度で空を見つめ、
中々家に帰ろうとしない。
浅原の思いは藤村に伝わるのか?
そして、藤村の過去に遡る!!!