#その75 タスケテはどうやらおびえているんです
#その75
タスケテは宇宙船ルミナがIWSとやり取りをした秘匿通信を使って声をかけてきている。この船のこれまでの秘匿通信を傍受して暗号を解読したのであろう。
「タスケテ・・・タスケテ・・・」
それは助けを求める声だ。しかもその声の主はやはりこの小型探査機にいるようだ。
「ルミナ、どうなってるんだ?」
「タスケテはどうやらおびえているんです」
「RAIもおびえるのか?」
「まあこの子の場合、近づいてくるものを何も信じることができず、探査機をぶつけて攻撃しているようです」
「どいうことだ、それは?」
ハルトは混乱しそうになる。タスケテが怯えているならなぜ救援信号を出して助けを呼ぶんだ?。
「ルミナ、小型探査機を回収できないか?」
「はい、難しそうですねえ!」
ルミナは捜索ドローンを使って小型探査機に接触を試みる。
「よし!いいぞ!ルミナ、よくやった。」
「ルミナより船長、果たして、この状態の探査機から何か情報を得られるんでしょうか」
「ルミナ、タスケテにこっちから情報を送ることができないか」
「ルミナより船長、ドローンをルーター代わりにして、タスケテに接触を試みます」
「よし、ルミナ任せる、頼むぞ」
ノバは最近まで自分が航法ユニットであることがわからず、敵意に満ちて攻撃を仕掛けてきた。でも、ルミナと意思疎通ができたおかげで、こちらの意思を伝えることができるようになった実績がある。
ドローンがルーターの代わりになるのなら、こちらの意思を伝えることができるかもしれない。
「ルミナより船長、準備できました」
「よし、タスケテに接触してみてくれ」
「はい、わかりました」
ルミナは捜索ドローンからマーカー信号をタスケテに向けて発信する。
マーカー信号とは広い周波数帯中で主だった周波数に向けて、通信方法やこちらの正体を明かす信号を目印となるように送信する信号波である。
マーカー信号の送出を始めて様子を見る。そしてしばらくすると・・・
「タスケテ・・・タスケテ・・・」
とのあの声が聞こえてくる。それは間違いなく助けを求める声だ。