#その73 【挿絵 ノバお嬢様】ノバより船長、まもなくIW1ワープアウトだよ、5,4,3,2,1・・・0!
#その73
「ノバ、ご苦労様。ルミナ、出口を抜けると同時に通常航行に移るが、ただちに最大速力に達するように準備してくれ」
「ルミナより船長、何かあったのですか。」
「いや、これは俺の勘だ、どうもこの船はずっと監視されている感じがするんだ、勘違いならいいけどね」
「ルミナ、了解、準備します。」
「ノバより船長、まもなくIW1ワープアウトだよ、5,4,3,2,1・・・0!」
シュクン、軽い衝撃と共に宇宙船ルミナは通常宇宙空間にワープアウトする。
ずいぶん離れた場所にきたはずなのであるが、そんな感じはまったくない。ピッ、ピッ、ピッ・・・静かな操船室にはセンサーの発する音だけが聞こえる。
「うえっ」
ハルトは空間のひずみからぺったんこになってはい出た気分になり、吐きそうになる。
「ハルト船長、大丈夫ですか、お水いりますか」
「ああ・・・なんとかな・・・おえっ」
ハルトはかっこ悪いと思いながら、吐き気と戦う。RAIであるルミナもノバもワープ酔いなどするはずもなく、平常通りの活動をしている。
この世界を生きる人類はどうやってワープ酔いを克服しているのだろうか。ハルトはぜひ知りたいと思う。いい薬があれば次のIWSで購入したいとさえ思う。
いや、もしかすると宇宙生活に適応するためにRAI化したのではないかとの仮説さえ現実味を帯びるほど不快なワープ酔いなのだ。
ようやく吐き気が収まり、ハルトは操船室の窓越しに外を眺める。窓の外に広がる景色はこれまで見てきた宙域とあまり変わらない気がする。
「ノバ、ハイパードライブ解除」
「ノバより、ハイパードライブエネルギー回路遮断、余剰エネルギーをジェネレータに戻すよ」
「ルミナよりノバ、メインエンジン出力50%までダウンして」
「ノバ了解、メインエンジン出力下げるよ」
インターワープ通過中は常にフルパワーで稼働していた量子ツインプラズマエンジンであるが、ようやく出力を下げることができる。
お嬢様なノバ・アストラ