#698 ハルトよ、頭が高い、わらわに意見しようなど、10万年早いぞよ
#698
「それはですね・・・」
アリスが口ごもったその時である。
「じゃじゃーん、呼ばれて飛び出る、女神ソフィアじゃ!」
ここんところ、ずいぶんとフレンドリーになり、気楽に顕現してくれる女神ソフィア様だがやはり出てきてくれたようだ。
「ほほほ、ハルトよ、ワープトンネル掘削機じゃがな、やってみよとアリスをそそのかしたのは、実は我なんじゃよ、驚いたか?」
なんだかそんな気がしていたが、ハルトはいちおう驚いたことにする。
「いやあ、これは女神ソフィア様、お会いしとうござりました」
「ハルトよ、そのような他人行儀はやめじゃ」
「ではいつものようにしましょうか、女神ソフィア様、空間歪イレーザでさえ、けっこうイレギュラーな神器ですよね」
「まあそうじゃな」
「それを可逆変化じゃあるまいし、空間歪と同じワープトンネルを新たに掘削するなど、ちょっと危険すぎるのではないですかねえ」
「ハルトよ、頭が高い、わらわに意見しようなど、10万年早いぞよ」
「ははん?そんなこと言って脅してもだめですよ」
ハルトも女神相手にひかないらしい。
「まあまあそんなにとんがるでない、お主が考えている通り、エルシア、ルクレア、アルメリアはそれぞれに異世界と呼んで差し支えない、本来は交わることがない別の世界なのじゃよ」
「やっぱりそうなのですね」
ルミナが言う。
「そうそう、だがな、閉じた世界だけではやがて収縮して消滅してしまうんじゃよ」
「それは知りませんでしたよ、宇宙の秘密ですね」
「まあな、で、縮み切る前に穴を開けて隣とつなげれば、しばらくは安泰になるんじゃ」
「では、ルクレアやアルメリアに活気が失われつつあるのは、縮み始めているということでしょうか」
アリスが真剣な眼差しでソフィア様に尋ねる。
「鋭いのう、その通りじゃよ」
「だがな、そこにいるルミナが目覚め、かなり離れた異世界から召喚したハルトと出会うことで、その心配は薄まりつつあるのじゃよ」
女神ソフィアはそういうと、優しいまなざしをハルトとルミナに向ける。




