#695 光で観測している限り、一日前の光景しか見ることができない
#695
「これを見てください!」
アリスはそう言うとハルトとミーナミの前にオブジェをコトンと置く。
「これは・・・」
「アリス中佐、これはなんだ?」
「はい、これはですね、ワープトンネル掘削機WTJ001の1/10モデルです」
アリスはふんすと鼻息も荒く、ハルトとミーナミ、ノバの前で説明する。
「えっ?もうモデルを作ったのか?」
ハルトとミーナミはさらなる説明をアリスに求める。
「これはですね、WTJ001を実際に製造する前の確認モデルなんです」
「ってことは、もう製造のめどがたってるってことですか?」
ミーナミがアリスに聞く。
「ええそうです、アリス工房に不可能はない、のです」
尋ねられたアリスは胸を張って、ミーナミに返事をする。
どうやらアリスにとっては空間歪イレーザを利用したワープトンネル掘削機が、夢ではなく、実現可能ということらしい。
今いる世界や空間とは別の空間があって、そこにも同じように宇宙があり、人やRAIが生活している、この理論は異世界や異次元、パラレルワールドなどと呼ばれており、SFでは割とスタンダードな設定だ。
ハルトも異世界に飛ばされた主人公が可愛らしい女神様と知り合って、楽しい冒険をする話は割と好きな方だ。
女神ソフィア様によって、この世界に送られたハルトは本当に異世界が存在することを実感している。異世界と言うとまるで違った環境が存在しているように思える。
光の速度で一日以上離れている場所同士は、光学望遠鏡で覗く限り、永遠に今を観測することはお互いにできない。それは光で観測している限り、一日前の光景しか見ることができないためによる。
その離れた場所同士は断層のようにずれているようにも思える。
惑星エリシアと惑星ルクレア、そして惑星アルメリアがインターワープを経由しないと行き来出来ないのは、2つの惑星が異それぞれ別の異世界に所属しているためとも考えることができる。
インターワープは異世界間に偶然できた断層を通るトンネルであるとするとわかりやすい。




