#662 ティアナお嬢様、おかえりなさいませ
#662
「はああ、着いた、着いた」
ティアナは首をこきこきさせながら、一歩踏み出す。
「ハルトさん、ティアロイドをビルドダウンするから、降りてね」
「・・ああ、わかった」
ハルトが承諾すると、ティアロイドの胸元から、ぽーんと射出されるようにエアポートにふんわりと降ろされる。
久しぶりの地上なので、重力のせいなのか、なんだかふらふらして足元がおぼつかない。
「ティアロイド、ビルドダウン!」
ティアナはそういうと、ビルドダウンを発動して、元の人間サイズに戻る。
改めて周囲を見回すと、セレスタワーで働いているたくさんの人たちが迎えに出てくれている。
「ティアナお嬢様、おかえりなさいませ」
イケメン執事が代表して、ティアナに出迎えの挨拶をする。
「うん、ただいま、お出迎えありがとう」
「お嬢様、いつもいつものことですが、お戻りの際には先ぶれを寄越すようにとお願いしているではありませんか」
執事はティアナの顔を見るなり、小言を言う。まあ執事だからな、きっと爺と呼ばれているんだろう。
「爺、まあ硬いことを言うな」
「それよりも旦那様を帯同しているのであれば真っ先に伝えて頂かないと、一同困りますぞ」
「そうか、私ももう勝手気ままな独り身じゃないんだ、ここを訪れる際は夫婦そろってだとそろそろわかって欲しいところだな」
「爺はまだそちらのハルト様をお嬢様の旦那様と認めたわけではありませんぞ?」
執事の爺にハルトのことを指摘されたティアナであるが・・・
「爺、いくら爺でも私の大切な旦那様に無礼を働くと許しませんから」
本気でティアナが怒ってくれたことにびっくりする。
「お嬢様、爺はお嬢様のことを本気で心配しておるので・・・」
「爺、それが余計なことなのじゃ、ハルト様はこのティアナにとってかけがえのない人なのじゃ、その価値は爺にはまだまだわからんだろうがな」
ハルトはここまでのやりとりを目を白黒しながら見ていたが、我に返る。




