#660 やあーん、ハルトさん、お手柔らかにねえ
#660
やはりティアナだ、方向音痴は生まれ故郷でも同じらしい。
「もう、仕方ないやつだな、ほれ、操縦をこっちに寄越せ」
「オッケー、助かりマース」
ティアナはそういうと、自分自身でもあるティアロイドのコントロールをハルトに寄越す。
「よし、コントロールもらったぞ、この高度維持のまま方向NKSへ距離10000kにセットするよ」
ハルトはそういうと、ティアロイドの操縦を始める。自分の奥様に乗り込んで操縦するのはなにやら変な感じだ。
「やあーん、ハルトさん、お手柔らかにねえ」
「変なこというなよ、操縦ミスるだろうが」
「へへへ、ミスってもこのティアナ様が即座に修正するから安心だね」
いや、ティアナがミスって位置がわからなくなったから、俺が操縦してるんだろうが、と一人でぶつぶつハルトは突っ込む。
さて、ハルトはティアロイドをうまく操って、というよりもじゃじゃ馬をなんとか乗りこなして、エリシアの大気圏を順調に飛行する。
惑星エリシアの地表は酸素と窒素と二酸化炭素で主に構成されていて、どこぞのチキュウと同じような組成となっている。おかげで惑星エリシアは人が居住できる星となっているのだ。
「ねえ、ハルトさん」
「なんだ?」
「私はね、エリシアのこの景色が大好きなんだ、だってさ・・・」
ティアナはそういうと少し言葉を詰まらせる。
「・・・私の故郷だから・・・さ・・・」
そういいながらティアナは少し涙声になっている。
「そうか、俺も好きだよ、この星も、そしてティアナもな」
「え?ほんと?」
「ああ」
「うれしい!」
ティアナはそう言うと、ハルトにバーチャルハグをせがむ。
「仕方ないやつだな」
「へへ、じゃ遠慮なく」




