#652 表にはい、裏にYesと刺繍された枕だ
#652
カノンが最初に聞いた3人組の声は、「ねえ、彼女たち、俺らとお茶しない?」だ。カノンはこのセリフを今でも鮮明に覚えている。
声をかけてきたのはアミルではなく、ミーナミだったと思うが、照れて真っ赤になりながら、ミーナミの横に立っているアミルはけっこう好印象だ。
ナンパされたカノン達は3人組に誘われるがまま、遊園地のインターランドに行く。ここで絶叫アトラクション「ワープドラゴン」に乗る。
アミル達3人は文字通り絶叫してしまう。カノン達は平気だったが、アミル達に合わせて、絶叫するフリをしたことが存外楽しかったことを今でも覚えている。
そういえば、ワープドラゴンの出口でおもらししなければ、カップルプレゼントをもらうことができたっけ?。
あのときは3組共に「はい、どうぞお幸せに」と言われてもらったのは、表にはい、裏にYesと刺繍された枕だ。
カノンは枕の意味がわからなかったが、アミルが「カノンさん、どうぞ」と言ってくれたので、持ち帰って自室に置いてある。
「あの、カノンさん?」
「アミルさん、なんでしょうか?」
「はい、Yes枕って覚えてますか?」
「はい、Yes枕?、ああ、ワープドラゴンの出口でもらったカップルアイテムですよね」
「そうです、あれってどうしました?」
アミルは話の接ぎ穂に困って、共通の話題をあれやこれやと思い出して、Yes枕のことを思い出して、話題にする。
「あれですか?、あれは自分の部屋に置いてありますよ」
カノンはそういうと、ちょっと照れた表情になる。
「実は自分、カノンさんと同じものを持っていたくて、後から購入したんですよ」
アミルはそういうと、部屋に備え付けのロッカーから、青色ベースのYes枕を取り出す。
「ほんと、同じ仲間の枕ですね」
カノンはアミルがこの枕を購入するところを想像して、くすっと笑う。
「あの、カノンさん、その・・・笑わないでください、カノンさんとお揃いのものを持っていたかったんです」
「あ・・・ごめんなさい、ちょっと想像したらおかしくなっちゃって・・・」
カノンとアミルはそれからしばらく笑い合う。




