#637 リリアはそう言うと、再度ミーシャの頬にキスをする
#637
コスモ1号は第3閉塞進入後、最後の亜光速運行に入る。ゴールの終着駅IWS3ベータまでもう少しだ。コスモ1号のコックピット内も少しだけ、緊張がほぐれる。
「ミーシャ車長、コヒをどうぞ」
リリアはそう言って、出発以来、運転手席に座ったままのミーシャに飲み物を手渡す。
「リリアさん、ありがとう」
ミーシャはそう言うと、ようやくリリアに顔を向ける。
「ミーシャさん、あんまり気を張り詰めすぎていると、いざというときに対応ができないですよ」
リリアはミーシャの顔を覗き込むようにして、にっこりとほほ笑む。そして、ミーシャのほほにちゅっと軽くキスをする。
「リリアさん・・・」
「ふふ、大丈夫ですよ、監視カメラはアッチの方を向けてありますから」
リリアはいたずらっぽく目を細める。
そして今度はミーシャがリリアのおでこにお返しのキスをする。
「リリアさん、このKDLSによる遠隔航法ユニットサポートは素晴らしいものですね」
「そうでしょう、なんせノバ姉の魂を愛するミーナミさんが丹精込めたものですからね」
「KDLSのおかげで、宇宙船を自由に飛ばす能力がなくても、こんなに素晴らしいコスモ1号を運航することができるんだからね」
「この方法を考案したミーナミ大尉も大したものだと思いますよ」
リリアは言う。
「スペースレールがあちこちに延伸すれば、この宇宙はもっと多くの人が気軽に移動できるようになるからね」
ミーシャは再びモニタと正面ウインドウを交互に見ながらリリアに返事をする。
「はい、そうですね」
リリアはミーシャの言葉に相槌を打つ。そしてさらにミーシャに声をかける。
「でも、ミーシャさん、もう少し肩の力を抜きましょうよ、疲れちゃいますよ?」
リリアはそう言うと、再度ミーシャの頬にキスをする。
「ふふ・・・ありがとう・・・」
その時だった、コスモ1号のコクピット内に警告音が鳴り響く!
「アミルより、前方に未確認物体、大きさ1000k、巨大です」
「ミーシャより指令室、迎撃しますか?」




