#633 出発信号確認、ブレーキ解除、ノッチ投入、オツキ駅内制限100
#633
「ああ、急なことで悪いのう」
エリオット国王は遠慮しがちに、プラットフォームからドアが開くのを待って、乗車する。アミルとカノンは、シミュレータでの特訓を活かして、夫妻を車両内のシートに案内する。
「お客様のシートは2号車1番AとBのシートです」
二人は乗車券を所持していないが、誰も乗車していない2号車のシートを選ぶ。
「なかなかいい車内じゃのう」
エリオット国王夫妻は2人に頭を下げる。
「着席しましたら、シートベルトの着用をお願いします、案内があるまで席をお立ちにならないようにしてください」
カノンがマニュアル通りに間違えないように緊張しながら案内しているのがうかがえる。ここにいる誰もがスペースレールの成功を祈っているのだ。
「うむ、わかった、よろしく頼むのう」
エリオット国王はそういうと、シートに深く座り、発車までの喧騒の時間を楽しむ。
「お客様に連絡します、間もなくドアが閉まります、駆け込み乗車はおやめください」
アミルがドアを閉じる操作をすると、しゅーという音と共に全ドアが閉まってロックされる。
「ミーシャより指令室、発車まであと15b、最終許可願います」
「こちら指令室、定刻通りの発車を許可します」
「コスモ1号、発車します」
ミーシャが車内に向かって放送する。
「出発信号確認、ブレーキ解除、ノッチ投入、オツキ駅内制限100」
ミーシャは深呼吸すると、コスモ1号のブレーキを解除する。
シュンと鋭い音と共にブレーキが解除されるとコスモ1号はふわりとプラズマレールにリンクを開始する。
次にミーシャはノッチを1に投入する。その瞬間コスモ1号はゆっくりとオツキ駅のプラットフォームから前方に向かって、走り出す。
「駅構内通過、制限解除、ノッチ10まで自動進段」
ミーシャはシミュレーション通り、コスモ1号のスロットルであるノッチを自動進段にセットする。コスモ1号はスムーズに加速をはじめ、滑るようにプラズマレールを進行する。
「まもなく第1閉塞進行、制限200」




