#その61 すみませんが、フードメーカーの試食ってできますか
#その61
「うーん、ルミナは何が食べたい?」
ハルトに言われてルミナもあちこちと物色する。
そして一番オーソドックスな食材を選ぶことにしたようだ。それは宇宙食スパゲッティだ。
「おっ、いいものを選んだな。」
ルミナがハルトに褒められたので、ノバもむきになって食品を選んでいる。
「船長、ノバはね、この宇宙食カレーライスっていうのがいいな!」
「おお、それもいいな、うまそうだ」
ハルトもルミナも賛成したので、3人はその商品をカートに入れると会計に向かう。
「ハルト船長、あれはなあに?」
ノバが指さしたのは、大きめの電子レンジのような調理器具だ。
レンジと似ているが、宣伝文句を読むと、フードメーカーらしい。フードメーカーはカプセル化された料理の原材料であるフードカプセルをこのマシンにセットしてスイッチぽんするだけで、盛りつけられた状態で料理を生成提供してくれる調理マシンだ。
原材料であるフードカセットや単品のフードカプセルを入れるだけで、多数の料理を生成してくれる最先端調理マシンで、インスタント食品とは一線を画す画期的な調理器具だ。
「すみませんが、フードメーカーの試食ってできますか」
ハルトは近くにいた販売員に尋ねる。
「はい、可能ですよ。こちらのマシンにこの試食用カプセルを入れていただければ、すぐに調理したものをお召し上がりいただけます。」
販売員の指さした先には小さなカプセルがある。
「どうぞ、お試しください。」
ハルトは販売員に促されると、天ぷらそば!と書かれたカプセルを手に取り、マシンの扉を開けると、内部の矢印が書かれた場所にセットして、がしゃんとレバーを下げつつロックする。このマシンは食器も生成されるようだ。
「カプセルのセットが終わりましたら、扉を閉めて、そこのスタートボタンを押してください」
「はい。」
ハルトは両手でそっと扉を閉めて、スタートボタンを押す。フードメーカーはウイーンと静かな動作音を発生する。
「60,59・・・・0、チーン」
懐かしい音が聞こえる。どうやら調理終了らしい。
「できましたよ、扉を開けてください。」
ハルトが調理器の扉を開けると、そこには懐かしい天ぷらそばが出現している。