#606 スペースレールに{ぷろぐらみんぐ}を施してみたいんだけどナ
#606
だが、ミーナミが愛する妻と娘にそのような理不尽なことを強いるはずもなかった。ミーナミの提案ではユナやまだ見ぬハルトとルミナ、ティアナから産まれてくるであろう子供たちは{ぷろぐらみんぐ}という特別な能力を持つSAIであり、その力を発揮してもらう内容だ。
夫婦とはいえ、ノバとミーナミはまだ二人だけの生活時間が短く、お互いに知らないことも多い。ノバはミーナミが異世界人の子孫であることはついこの間知ったし、ミーナミに教えていないことも多いのだ。
「ノバ少佐、ちょーっとこっちに来てもらえるかな」
アリスがちょいちょいとノバをアリス工房に招き寄せる。
「アリス中佐、なんでしょうか?」
「そろそろ、スペースレールに{ぷろぐらみんぐ}を施してみたいんだけどナ」
アリスがノバを階級呼びをする時や語尾に{ナ}が付く時は警戒する。アリス工房は今やクルーにとって拷問部屋と呼ばれているくらいだ。
「アリス中佐、わかりました、すぐに行きます」
「あっそうそう、もちろん、ユナちゃんと一緒ね」
「ユナもですか?」
「そうよー、ユナちゃんが主役だもんね、あっそれと、チョコ少尉も一緒だからね」
それまでブリッジでぼーっとしていたチョコの名前が呼ばれてびくっと反応する。
「せっ、拙者もでござるか?」
「そうだよ、すぐ来てね」
アリスはそういうと、ノバの返事も聞かずにさっさと工房に戻ってしまう。
「ユナ、行くよ」
「あい」
ノバが声をかけると、ユナは嬉しそうに答える。ユナを抱っこして、横にチョコがついてくる。
ノバはアリス工房に入るのは実は久しぶりだ。ミーナミと一緒に入室したかったのが、忙しいらしく近くに姿が見えない。
「アリス中佐、ノバ、ユナ、チョコが参上したよ」
ノバがアリス工房を見回すと、ずいぶん前に訪問した時よりもでかくなっている気がする。旗艦ルミナスの大きさは変わってないのだから、どこかを削って拡張したのだろう。
「みんな、よく来てくれましたね」
アリスはユナの顔を見ると、抱っこしようと両手を伸ばす。




