#601 人柱はできればお断りしたい・・・です
#601
「あっ、アリス中佐、シミュレータですが・・」
ミーシャが報告しようとする先をアリスが遮る。
「あっ、みんなごめんごめん、シミュレータ難しいでしょ、今の設定は5年目運転士研修用に試作した突発トラブル対応だから、初めてというかまだ完成もしていないスペースレール列車運転士には劇難だと思うんだよね」
アリスがさらっと説明というか、言い訳をしている。
「えーっ、自分、障害物対応四苦八苦して切り抜けましたけど」
ミーシャは愚痴らしいが自慢ぽくもある苦情をアリスに言う。
「おお、ミーシャ運転士、それはすごい、あなたもう運転士試験合格でいいよ」
「ちょっとうれしい・・です」
ミーシャはアリスに褒められて不覚にも喜んでしまう。
「私たちもがんばりましたよ、ねえ?」
リリアがアミルとカノンに目配せし、同意を求める。
「あ、ああ、がんばった」
「がんばりましたです」
アミルとカノンも同意する。
「あっ、アリス中佐?」
口々にアリスに好き勝手なことを言ってアリスが不愉快になったのではないかと思ったミーシャはおそるおそるアリスの顔をうかがう。
「なーに?ミーシャ運転士?」
「あのー、そもそもスペースレール運転士ってなるのに国家試験とかがあるんですか?」
「ははは、冗談よ、ミーシャとリリア、アミルとカノンは最初の運転士になるんだから、試験なんてあるわけないじゃん」
「なんだ、びっくりさせないでください」
「でも最初だから、いろいろ想定しちゃってありえないことも経験することになるかもね」
アリスが恐ろしいことを平気で言うので、ミーシャたちはびくっとする。
「それと、来年はみんなに続く後輩を育てるためにあのシミュレータの実験台になってもらう予定だけど?」
ミーシャとリリアは顔を見合わせる。
「人柱はできればお断りしたい・・・です」
アミルとカノンもそれに同調し、このあとしばらく休憩室に重たい空気が漂うことになる。




