#598 二人きりになっても階級で呼び合わなきゃだめですか?
#598
ぷしゅーっと休憩スペースの扉が開き、二人を迎え入れると、ぷしゅっと短い作動音と共に閉じる。
「リリア少佐、緊急事態を無事に解決することができました、ありがとうございました」
ミーシャはそういうと、リリアに向かってぺこりと一礼する。
「いえ、こちらこそ、無事解決できて良かったです、でも・・」
「でも、なんでしょうか?」
リリアはミーシャをじっと見つめる。
「二人きりになっても階級で呼び合わなきゃだめですか?」
「あっ・・、リリアさんでいいですか?」
「まあ、いいけど、呼び捨てでもいいけど」
リリアは真っ赤になって口ごもる。二人の間にはなんだか気恥ずかしい沈黙が訪れる。
「し、しばらく休憩しましょう」
ミーシャはそういうと、お茶のボトル取りに簡易給湯室へ駆け出す。リリアはあわてて立ち上がり、その後を追いかける。
「いえいえ、ここは私がやりますよ」
「いえ、こちらは任せて下さいね」
二人は見つめ合うとくすくす笑いあう。
ひとしきり笑った後、再び沈黙が訪れる。ミーシャとリリアの間にはそんな静かな時間が流れていくのがお似合いのようだ。
ミーシャとリリアは給湯室からテーブルに戻ると、お茶のボトルを開け、カップに紅茶を注ぐ。
「しかし、さっきのトラブル、よくできていました・・・」
リリアがシミュレータが生み出したトラブルを思い出してミーシャに話しかける。
「本物そっくりでありそうなトラブルでマジであせったね」
リリアの感想にミーシャが相槌を打つ。
「でも、ちょっと楽しかったです」
リリアがそういうと、ミーシャもうれしそうにうなずく。
シミュレータのおかげで、リリアさんとの距離が縮まった気がする。シミュレータ、ありがとう、と心の中で言っておく。
「あの・・・」
「リリアさん、なんですか?」




