#555 仮想レールの上を「列車型」宇宙船が疾走するのがスペースレールだ
#555
「ミーシャ、アミル、ありがとう、がんばろうな」
こうして「スペースレール」を実現できる航法システムの開発にミーナミ、ミーシャ、アミルの3人は取り組むことになる。
ミーナミは学長に掛け合って大学の一室を拠点として借り受けることに成功する。学長には内容はまだ秘密としていたが、快く部屋を貸してくれる。部屋の名前は「次世代高速移動システム開発室」とする。
新しい環境に慣れると3人は早速、立案した「スペースレール」構想を具体化していく。3人は大学の図書館から宇宙関連の書籍や論文をかき集めてくると、検討会を始める。
3人のアイデアはこうだ。
まずは惑星エルシアとインターワープステーションアルファを結ぶ航路を設定する。次にその航路上に仮想レールを敷設する。
仮想レールはプラズマレーザをネットワークで結ぶ。乗務員や客の目には鉄のレールと同等のモノが敷設されているように見えるはずだ。
この仮想レールの上を「列車型」宇宙船が疾走するのがスペースレールだ。
この「列車型」宇宙船は、仮想レール上をKDLSのサポートにより高速で航行する。そのためにこれまで単独宇宙船に不可欠であった精密な航法システムが不要になる。
そして、極めつけは仮想レールをインターワープ内に敷設することにより、高価な航法ユニットが不要になるのだ。
「スペースレール」はこうして宇宙大学に一室で産声を上げる。
スペースレールを成功に導くカギは、航法ユニットデータリンクシステムKDLSにある。
ミーナミが初めて目にしたKDLSは航法ユニットであるノバさんの意識を離れた場所にいるユナやチョコが共有することで成立した奇跡のシステムである。
この時は、インターワープを単独で通過することなど逆立ちしてもできないティアナがその恩恵を被ることができ、インターワープ内を自由に動き回れることを立証することができた。
航法ユニットなしで広大な宇宙空間を自由に飛行することは困難だし、航法ユニットがなくてはインターワープを航行することができない。
だが、仮想レールを敷設した宇宙空間であればどうだろうか。航路が仮想レールとして設定されていれば、かなり楽になるはずだ。ミーナミは仮設レールの敷設にKDLSを応用することを考えたのだ。




