#その5 うーん、どうすれば自分の宇宙船を見つけることができるのかなあ
#その5
「まあ、いいか」
ハルトはそうつぶやくと、公園を出て街がありそうな方面に向かう。
ハルトが転生した異世界は地球によく似た環境で、人類の大部分は宇宙コロニーと呼ばれる巨大で人工的な建造物に住んでいる。そしてこのコロニーの人々は地球人と同じように生活している。
ハルトは当てもなく自分の宇宙船を探すために街を散策するが、なかなかそれらしき船を見つけることができない。
「うーん、どうすれば自分の宇宙船を見つけることができるのかなあ」
ハルトは途方にくれてそうつぶやく。
「とにかく街を散策してみよう」
そう考えたハルトはさらに街をぶらつく。
頭上はるか遠くにも街路が見られる景色は、最初すごい違和感だったが、じきに見慣れた景色となる。1時間以上あたりをぶらつくとさすがに疲れてくる。ふと、見回すと、コーヒーカップから湯気が出ている看板をぶら下げた店が目に入る。
「これはきっと喫茶店だろう」
ハルトはそう思って、重厚なドアを押し開ける。
ドアにくっついているベルががらんがらんと懐かしい音を奏でる。
「ああ、いらっしゃい」
店の中には中年と思われる渋い男性マスターがカウンターの中に一人いて、いらっしゃいませと声をかけてハルトを迎えてくれる。
「一人だけど、いいですか」
「もちろん、いいとも」
マスターはそういうと、ハルトにカウンター席に座るように勧める。そして、壁に貼ってあるメニューを指さす。
「何になさいますか」
そういえば、マスターの言葉がわかるし、このメニューもちゃんと読める。
このコヒーと書かれているのが、地球におけるコーヒーによく似た飲み物に違いない。
「コヒーお願いします。ホットで」
ハルトはそういうと、カウンター席の丸くて少し高めの椅子にしっかり腰を降ろす。
宇宙世界に来て初めて腰を降ろすことができて落ち着いた気がする。ハルトはポケットからスマホを取り出す。電源が自動でONになり、画面が点灯する。画面には地球で使っていた時と同じ部分と違う部分があるが、宇宙世界で地球のスマホがちゃんと動いていることに感動する。きっとソフィア様のくれたチートの一つなのだろう。