#その47 野良猫ねえ・・・RAIが野良猫みたいになるなんて面白いなあ
#その47
ということはノバがこの船に現れたのはルミナと同様に決して偶然ではなく、ハルトの夢をかなえるために集まってきたと考える方が自然だと、ルミナは話してくれる。まだこのことはノバは知らないが、いずれ話しておくとルミナは言っている。
「まあ、これでこの宇宙船ルミナはインターワープ利用通過が可能になったわけだな」
ハルトがルミナに言う。
「そうですね、船長。ですが、私としてはノバには再教育が必要だと思っています。」
「教育って、何を教えるんだ?」
「うーん、とりあえず常識ですかね。まずは基礎から・・・」
「でもさ、そもそもRAI実在人工知能って教育とか必要なのか?人間と同じ自立した人格なんだろう?」
「そうかもしれませんが・・・あの性格のままではいつかやらかしそうで少し心配です」
「そんなもんかねえ、ルミナは特に教育なんかしなくたって、常識も充分弁えているし、1000年分の知識の蓄積もあるから、船長の俺なんかよりよっぽど頼りになるけどね」
ルミナはハルトにそう言われて顔をほころばす。
「ハルトさからそんな風にほめてもらえると恐れ多いです。私はハルトさんに好いてもらって、愛情を注いでもらっているので、すぐに立ち直ることができたのです」
「面と向かって言われると、なんだか照れくさいね。」
「でも、ノバはまるで野良猫のように安全な場所を探して宇宙を放浪していたようなので、心がちょっとばかりやさぐれているのが心配なのです。」
「野良猫ねえ・・・RAIが野良猫みたいになるなんて面白いなあ」
「まあ、私はハルトさんに救ってもらってとってもうれしかったです。ぜひ、ノバも救ってやってくださいね」
「ルミナがそういうならノバのことをかまってみるよ」
ノバは基本的にはルミナと同じであるが、少し違うところはルミナより警戒心が強いことだ。なので、ハルトが好意でいろいろ教えても、あまり素直に受け入れてくれないかもしれない。
だが、それでもハルトはノバをなんとかしてやりたいと思う。そして、ルミナはノバをインターワープ航法ユニットとして活躍するための心構えを躾けている最中だ。ノバには誰かのためにがんばるという気持ちが圧倒的に不足していて、このままでは自分の気の向いた時にしか航法ユニットとしての役目を果たしてくれないかもしれない。
ルミナのノバに対する躾を始めて2週間ほど経過したころに、その事件は起きた。
「船長!大変です!」
「どうした?何が起こったんだ?」
「小惑星ベルトの小惑星が、こちらに突っ込んできます!」