#453 「婿殿ー」と手を振るのが見えるから、あれは魚ではなくてティアナだろう
#453
「いやあ、みんな楽しそうでいいねえ」
ハルトもそういいながらも、ビーチベッドで横になっている。
みんなが遊んでいる間、こうして休息を取っているのだ。そんなハルトの横にちょこんとノバが座る。そしてノバの腕にチョコが抱きつくと嬉しそうにする。
「チョコちゃん、どうしたの?」
ノバが尋ねると、チョコは答える。
「拙者はこんな風に、みんなと遊べるのは初めてで夢のようでござるよ」
チョコはうれしそうに話す。
「そっかあ」
そんなチョコをノバはひょいっと抱っこして撫でる。
「ねえねえ、ハルトさん」
ティアナに文句を言っていたルミナもやってきて、ハルトに声をかける。
「どうしたの?」
「私たちも、海で遊ぼうよ」
ルミナはそういうと、ビーチベッドに寝転んでいるハルトの背中から抱きつく。
「うん、そうだね、じゃあ行こうか」
「行こう、行こう」
ハルトはルミナにそういうと、ルミナがハルトの腕を引っ張ってベッドから起こす。
そんな2人を見て、チョコが羨ましそうにする。
「拙者もノバ殿と遊びたいでござるよ」
そういいながら、チョコはノバの腕にしがみつく。ノバはちょっと照れている。
「じゃあさ、チョコ、一緒に泳ごうか?」
ノバはそういうと、チョコを抱っこしたまま波打ち際へ向かう。
リリアとカノンの二人は波打ち際に座って、ちゃぷちゃぷと水遊びを楽しんでいる。
「気持ちいいねー」
リリアはそういいながら、カノンの頭を撫でている。
「はい、気持ちいです」
沖に目を遣ると、時々魚らしき生物が見事に虹のようなアーチを描く。
そのたびに、「婿殿ー」と手を振るのが見えるから、あれは魚ではなくてティアナだろう。海でも宇宙でも元気な奴だ。あれが自分の奥さんなんだなあ(しかも本物のお姫様だ)と今更ながら実感する。




