#その45 目の前で私を持ったまま殺し合いをするのはたまらなかったよ
#その45
「あなたは何で廃宇宙船のあんなところに逃げ込んだの?救難信号を出したのもあなたなんでしょう?」
ルミナが不思議に思ってノバに聞く。
「私ね、前は大きな戦艦の航法ユニット専用RAIとして働いていたんだ」
「大きな戦艦ってどのくらいの大きさかな?」
ハルトが興味津々でノバに聞く。
「この船の十倍くらい・・・戦艦だもん」
「小さくて悪かったな」
ハルトは小声でつぶやく。
「えへん、ノバ、続けて」
「ハルト船長、けどね、恒星間戦争が始まると航法ユニットの奪い合いが激しくなってきたんだ」
「そうか」
「挙句の果てそこに巻き込まれて、私の取り合いにあって・・・」
「それはつらかったな」
「目の前で私を持ったまま殺し合いをするのはたまらなかったよ」
ノバはそういうと、目からぽろぽろ涙を流し始める。その様子を見たルミアは争いの果てに辺境の惑星に閉じ込められた自分を思い出したのか、目にじわりと涙を浮かべる。
「それで、逃げ出したってわけ?」
「そう、でも私ってこの通り小さいでしょう?反転攻撃もうまくできなくて、小惑星ベルトに隠れていたんだけど、追い詰められてあそこにいたんだ」
「なるほどな・・・」
ルミナはノバの説明に納得するがハルトはまだ納得していないようだ。
「なあ、ノバ、お前は本当にRAIなのか?」
ハルトが船長としてもう一度ノバに聞く。
「なによ、何度も聞いて!私が嘘を言っているとでもいうの!」
ノバが怒りだす。しかしハルトは冷静に言葉を返す。
「もし、ノバが本当にRAI実在人工知能ならこの船で面倒を見てもいいと思ってるんだけどね。でも、もし、そうじゃなかったら・・。」
「だったらどうだというのよ。」
ノバが喧嘩口調で応酬する。