#その42 ねえ、あなた、もしかして、RAI実在人工知能なの?
#その42
ハルトは戦闘用宇宙服を着用する。この宇宙服は戦闘用に体にぴったりフィットして動きやすいが、酸素量は少なく、傷を追うと酸欠になりやすい。
この宇宙服に装備する武器はコンパクトライフルだ。このライフルは銃身が短く狭い船内で使うのに適している。弾は実弾とエネルギー弾の両方を装填することができる。
ハルトは3Dルミナと共に、エアロックに入る。エアロック内が外部と同化すると、船外への扉がプシュッと軽い音を立てて開く。外にゆっくりと泳ぎだし、宇宙服に装備されているスラスタを吹かして向きを変えると、ワイヤをつかみ、アックスの横を通って相手船内に入り込む。
敵艦内は薄暗く人が生存している気配はない。ハルトとルミナは狭い通路を周囲を警戒しながらゆっくりと進む。ルミナは艦内をスキャンを繰り返して、おおよその艦の構造をつかもうとしている。
「船長、ブリッジに入れそうです」
「よし、乗り込んでみるか!」
ハルトはそういうと、ブリッジらしい厳重な扉にコンパクトライフルから実弾を打ち込み、ロック機構を破壊する。ハルトが扉を蹴とばすと、扉が開いたので、ブリッジに侵入する。
侵入したブリッジ内には・・・なぜか一人の女の子がうずくまっている。10代後半だろうか。見るからに若々しい。ただし、ルミナと同じ50cm3Dビジョン姿である。
その女の子もハルトとルミナがいきなり現れたことに驚いたのか、呆然とした表情でこちらを見ている。しばらく見つめあっていたが、やがて我に返り、こう叫ぶ。
「あ・・・あなたたちは誰!どこから現れたの!」
「我々は宇宙船ルミナの船長ハルトとルミナだ。小惑星ベルトを放浪し、救難信号を出していたこの船に調査のために乗り込んできたんだ」
「ねえ、救難信号を出したのはあなたなの?」
ルミナが女の子に聞く。
「私、救難信号なんて知らない。ふと気が付いたらこの船から誰もいなくなっていて、一人になっていた」
「そんなことってあるのか」
「船長、この子、人間じゃないですよ」
「そりゃまあ、見りゃわかるよ、50cm3Dビジョンだしなって、ルミナと同じじゃないか」
「船長、ここには空気がないし、人間はとても生きていけない環境です」
「ルミナ、この子は何者なんだい?わかるかい?」
そういわれて、ルミナは女の子の前に歩み出る。
「ねえ、あなた、もしかして、RAI実在人工知能なの?」