#402 これはね、男性同士の恋愛を描いた物語で、主に女性向けのお話よ
#402
「ここにはね、通称薄い本を主力としていろいろな乙女グッズが売っているのよ、この本なんてどうかしら」
ルミナが手にとってティアナに見せる本の表紙には、若い男性と小太りな男性がハグしている様子が描かれている。
これはBL本ってやつだ。あれれ、この男たち、どっかで見たことあるぞ。確か、千葉で鹿によく似た動物が増えてどうたらこうたらを話題にしていた作者の持ちキャラのような気がする。
だが、本全体を包む薄いカバーがかけてあり、中は見ることはできない。
「ルミナさん、この薄い本はどういう本なの?」
「これはね、男性同士の恋愛を描いた物語で、主に女性向けのお話よ」
ルミナの説明にティアナは納得する。
「なるほど、つまりこの本には男の人同士が仲良くしているシーンが描かれているんですね」
「そうよ、でもそれはあくまでお話だから、実際にそういう行為が書かれているわけじゃないからね」
「ふーん、そうなんだ、これはナニかな」
ティアナが手に取ったこれまた薄い本には今度は若い女性と女性がキスをしている絵がどうどうと描かれている。
これは百合本かな。古いアパートを舞台にした日常を面白おかしく描いた物語で、そこに出てくる主人公の恋人を狙うサブキャラクタ同士を恋人に仕立てたと思われる。やはり薄いカバーで覆われていて、中を見ることはできない。
ティアナはその本をしげしげと眺めている。
「ハルト隊長、これ買っていい?」
「ああ、もちろんいいよ、好きなだけどうぞ」
ティアナは気に入ったのか、ハルトに購入をねだっている。きっとぐっとくるものを感じたのであろう。
ルミナもティアナもハルトの妻なので、男女がからむ薄い本は購入に抵抗があるが、BL本や百合本なら抵抗も少ないのであろう。まあ、ルミナは前からBL本が好きなようだからな。
前から感じていたのだが、この異世界宇宙にはハルトが転生前にいたチキュウの文化や習慣があちこちに見受けられる。
これは女神ソフィア様がこの世界に関係しているのだから当然のことだとハルトは知っている。だが、それにしてもBL本や百合本なんてちょっとピンポイントすぎやしないだろうか。




