#390 二人はさらなるラブラブの高みにたどり着けるのかもしれない
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そのおかげで6人乗りでありながら、2人単位のカップルシートになり、二人だけの閉じた空間ができあがる。キス位なら他の席から見えることはなさそうだ。
ワープドラゴンの挙動に耐えることができた暁には、二人はさらなるラブラブの高みにたどり着けるのかもしれない、のである。耐えられなかったときはどうなるのかは想像したくもない。
「みなさん、本日は宇宙一の絶叫コースターを誇るワープドラゴンにご搭乗頂き、誠にありがとうございます。これよりワープドラゴンは宇宙空間に出航します。どなた様も途中でご説明した注意事項をお守りの上、絶叫をお楽しみください、それでは、出航しまーす、3,2,1,はっしーん!」
カウントが終わると、ワープドラゴンはステーションをゆっくりと離脱した後ですぐにふわっと浮上する。そして、いきなり・・・フルパワーで加速する。
ぎゅいん・・・
「うわっ」とミーナミ。
「きゃっ」とノバ。
{ノバさんの悲鳴、可愛い・・}
ワープドラゴンは宇宙を模した空間に飛び出し、無重力になったかと思うと急角度で上昇し、その後一気に下降、さらにUターンして元来たルートに戻ったりを繰り返す。
物理的なレールはなく、機体は空間レーザーで誘導される。そのおかげでコースを変えることが簡単にでき、リピータになってもらい、何度も挑戦するお客さんの獲得に成功している。
「うぎゃああああ」
ミーナミ達が叫ぶのは無理もない。なにしろ座席はカウルで覆われていたのがいつの間にか全開になっている。疑似宇宙空間なので、空気はあるが、恐怖で息ができない、気がする。
「きゃあああああ」
ノバはミーナミに合わせて可愛らしい悲鳴を一応上げる。
この悲鳴が、嘘悲鳴だと聞き分ける余裕はミーナミにはなさそうで幸いだ。ワープドラゴンはその悲鳴を原動力にして、喜びを得たかのようにさらに加速する。
お客さんをさんざん振り回したワープドラゴンは徐々に減速して、停止シーケンスに入るような挙動を見せる。前方にようやくステーションの照明が見えてくる。
「ノバさん、うわさのワープドラゴン、すっごい迫力でしたね」
ミーナミの問いかけにノバは答える。
「そうですね、さすがでしたねえ」
その瞬間、ワープドラゴンはいきなりフルパワーで再度加速する。




