#その37 この小惑星ベルトに係留してしばらくインターワープ航法ユニットの探索だ
#その37
「艦長、前方に小惑星ベルトがあります。コロニーが所属していた惑星と同じ系列のようです」
「うん?そうか?」
ハルトはルミナが指さす方向を見るが何も見えない。しかしルミナには見えているらしい。小惑星ベルトは何らかの原因で粉々になった星々の破片がどこにも行けずに惑星軌道に捉えられてしまうと発生する。
衛星軌道のデブリと違い、桁外れに個数が多いので、除去活動は航路にでもならない限り行われることはない。長い間放置された小惑星ベルトは宙賊や流れ者の隠れ蓑になることも多く、堅気の宇宙船は近づくことを好まない。
「はい、この星域の空間座標に存在しています」
「わかった、じゃあそこに行ってみよう!」
ハルトはルミナにそう命じる。
「船長、了解しました」
ルミナはそう復唱し、宇宙船の向かう方向の計算から航路を決定する。その航路に沿って飛行するように宇宙船ルミナを操船しなくてはならない。
航路計算と正確な操船はなかなか両立しないが、ルミナは器用にやってのける。だが、ルミナのオーバーワーク解消するためにも航法ユニットをなるべく早く見つけることが大切だ。
「船長、小惑星ベルトに着きました」
「よしルミナ、この小惑星ベルトに係留してしばらくインターワープ航法ユニットの探索だ」
「はい船長、わかりました、やってみます。」
「うん、大きめのデブリの陰に隠れてしまおう」
ルミナはハルトの指示により至る所に存在する惑星の破片のうち、大きめのものを選ぶとそこに隠れるように宇宙船ルミナを停船する。
停船後はメインエンジンを停止、補助エンジンもアイドリング状態に保つことでエネルギーを節約することができる。緊急事態になれば、素早くメインエンジンの始動も可能だ。
そしてハルトとルミナは周囲の空間を探索する。破片といえども大きくなると微弱な重力波を発生し、宇宙船を引き込むために注意が必要となる。ルミナはそんな重力波を考慮しながら停船場所を決めてくれる。
「船長、停船場所はここでいいですか」
「ルミナ、ここでいいよ。特に急ぐわけではないからゆっくりやろうじゃないか」
「船長、わかりました」
「ロケットアンカー準備します」