#その343 まずはイルカ号の暴走を止めることを考えましょうね
#その343
「フェニックス1号、了解」
ティアナは周囲とクルーザーの挙動を警戒しつつ、公開通信回線を使ってクルーザーに呼びかける。
「イルカ号聞こえますか、こちらレスキュー隊フェニックス1号、応答できますか」
「・・・こちら、・・・クルーザーイルカ号・・・かろうじて・・・聞こえます・・」
「こちらFX1、助けに来ましたよ」
「FX1,ありがとう・・うれしい」
「イルカ号に何が起こったのか、状況説明できますか」
ティアナはティアロイドをIW3直前の宇宙空間に静止して会話を続ける。
会話をすることで相手も気持ちが落ち着くし、現在の宇宙船の内部の様子を知ることもできるかもしれないのだ。
「フェニックス1号へ、IW3を経由してワープアウトした直後、いや直前かもしれない・・・に航法ユニットが突然爆発、そのままクルーザが暴走して、側壁衝突、その後ここで停止、こうなっています・・」
「今、イルカ号は位置を移動していますか?」
「はい、移動しています、IW3内部に向かってじりじりと逆走しています」
一度進み始めれば戻ることはないと説明されているインターワープに引き込まれている状況はかなり恐怖を感じているに違いない。ティアナもその感情には共感できる。
「では、まずはイルカ号の暴走を止めることを考えましょうね」
「フェニックス1号、そうしてもらえるのか・・・ありがたい・・・」
「イルカ号へ、乗船数は何名ですか?」
「私も入れて7名のはずだったのですが、乗客はどこかへ消えてしまい、今は2名です。申し遅れたが、私は船長のトーダです、もう一人相棒の航海長セイルが乗り組んでいます」
「乗客が消えたとは?」
「言葉通り、突然いなくなりました」
ティアナは乗客が消えるなどという不思議な現象は信じないが、今は解明している時間はないので、スルーする。
「トーダ船長、具合が悪くなっている人はいないですか?」
「ここに停止してから変な揺れ方をするので、気分は悪いです。でも病人やけが人はいないです」
「フェニックス1号より、それは良かったです。もし具合が悪い人が発生したらすぐに教えてくださいね」
ティアナはクルーザの船長トーダを元気づけると、ハルトに連絡する。
「ティアナより隊長、聞こえますか」
「ハルトだ、よく聞こえるよ、やり取りは聞かせてもらったよ」




