#その336 フェニックスか、瀕死の地獄から助けてくれるんだから、ふさわしい名前だな
#その336
セイルも付き合わせて悪いことをしたな・・もう最後かと思うと様々な思いが胸の内を去来する。
これが走馬灯っていうやつか、トーダはあれこれとりとめもなく思いを馳せる。その時、トーダはインターワープステーション3で聞いた噂をふいに思い出す。
「最近、スペースレスキュー隊なるものが結成されたらしいぜ」
「それはどんなもんなんだい?」
「宇宙で遭難したり事故を起こした時に、駆けつけてレスキューしてくれるチームらしいよ」
「でもまあ助かったとしても高額なレスキュー費用を請求されちゃあ、後が地獄になっちゃうだろうが」
「それがな、このレスキュー隊は無料らしいぞ」
「そりゃまた奇特な人もいるもんだなあ」
「まっ、あくまでもうわさだがね」
「どうやってレスキュー隊に伝えればいいんだい?」
レスキュー隊に興味を持ったトーダは隣にいた見知らぬ人に思わず尋ねてしまう。
「ははは、レスキュー隊はこの宇宙を飛び交う全ての通信を24時間常に傍受しているから、どの通信回線で助けを求めてもいいんだとよ」
「へえ、それはすごいな。貴重な話を聞かせてもらってありがとう」
「そうそう、レスキュー隊はフェニックスという名前だそうだよ」
「フェニックスか、瀕死の地獄から助けてくれるんだから、ふさわしい名前だな、覚えておくよ」
トーダはそういうと男にエールを一杯おごってその場を後にする。
トーダ船長はその{うわさ}を思い出し、最後の望みをかけてマイクバーを口元に降ろす。通信回線トランシーバの出力は最大、周波数はブロ-ドキャストでなるべく広範囲にばらまくことにする。
#イルカ号より タスケテ・・・
「こちらスペースクルーザイルカ号、インターワープ内で事故発生、もうだめだ、スペースレスキュー隊フェニックス、もし聞こえていたら、タスケテ・・・欲しい」
「・・・・・」
「繰り返す、こちらスペースクルーザイルカ号・・・」
トーダは聞こえているかどうかもわからないレスキュー要請を何度も繰り返す。トーダにできることはもうスペースレスキュー隊に救助を要請するくらいしか残っていない。
{タスケテ ・・・・}