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#その335 これまでは奇跡的に生還することができたが、今度ばかりは生きて戻ることは難しいようだ

#その335


「ハイパードライブも制御不能です」

 セイル航海長は悲鳴を上げながら答える。


「なぜだ?」

 トーダ船長も疑問を尋ねるくらいしか頭が回っていない。


「わかりません、航法ユニットが破損した場合、ハイパードライブは緊急停止するはずなのですが、ハイパードライブにアクセスできません」


「やはり出所の怪しい航法ユニットはだめか、欲張った罰かなあ」

「トーダ船長、現在この船はIW3側壁に衝突し、壁にひっかかっている状態と思われます」


「車でいえば、ガードレールに側面をこすりつけて停止しているってとこか?」

「まあ、そんな感じですね」


「インターワープの壁に突っ込んで無事だった初の人類かもしれんな」

「トーダ船長、そんなこと言っている場合じゃないですよ」


「うん、わかってるけどな、それでなんとかならんのか?」

「そもそもインターワープ内で停止した事例を見たことはないので、どうしたらいいかわかりません」


「くそ、やけくそだ、緊急離脱しよう、ハイパードライブ再起動!」

「だめです、再起動しません」


 航海長セイルはトーダに言われる前から、考えられる全ての対応を何度も試しているが、状況は変わらない。


「トーダ船長、イルカ号はじりじりとインターワープ3内部に引きずり込まれています」

「それはまずいぞ、このままだと時空の歪にひきこまれてしまうかもしれない」


 インターワープの全てが解明されていない現在、内部で事故が起きた場合にどうなるのかはわからない。今までに事故から生還した船が一隻もいないので、わからないというのがその答えだ。


 正体不明のインターワープをこれまた謎の多い航法ユニットを使って通過するのはやはりリスクが大きすぎる。今更そんなことを言ってもあとの祭りであるが。


「これまでか・・・」

 トーダは今までに何度も危機を乗り越えてきた。


 もうだめかとあきらめたことも一度や二度ではない。これまでは奇跡的に生還することができたが、今度ばかりは生きて戻ることは難しいようだ。


 まあこれまでの人生、勝ち組だとは思っているが、死んでしまっては勝ちも負けもないか。


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