#その334 衝突まであと3秒・・・2秒・・・1秒・・・0・・
#その334
「なにい?」
「このままだと、インターワープ側壁に衝突します」
「衝突するとどうなる?」
「衝突から生還した例がないのでわかりません」
「うわああ」
そうこうしている間にインターワープ内の形容しがたい色を持つ側壁がイルカ号に迫ってくる。
「船長、本船は側壁に衝突します」
「全クルーは衝撃に備えろ!」
「衝突まであと3秒・・・2秒・・・1秒・・・0・・」
イルカ号はインターワープ3の側壁に、船体右角から側面の中ほどまでを、こすりつけるように衝突する。艦首からまともに突っ込まなかったために、船体崩壊はまぬがれたらしい。
衝突のその瞬間、ブリッジの照明が一瞬消え、そしてすぐに点灯すると同時に船内の電気系統もすべて落ちる。同時に非常灯がともる。
「うおおおおおお」
乗客から悲鳴が聞こえる。
セイル航海長はなんとかこの事態を収拾しようとするが、航法ユニットは沈黙したままだ。
「おい、セイル航海長、現状はどうなってる?」
「イルカ号の現在座標によれば、間もなくIW3アルファへのワープアウトです」
ようやく事態を把握しつつあるトーダ船長はユニット収納庫の扉を開ける。庫内には煙が充満している。ハンディライトを照らしてみると、航法ユニットは見るも無残に焼け焦げている。先ほどの爆発音はやはり航法ユニットから出たらしい。
「セイル航海長、お客さん提供の航法ユニットが丸焦げだ」
「トーダ船長、これは困りましたね」
「航海長、そうか、ちょっと客の具合を見てくる」
トーダ船長はそういうとようやく客室に入る。
「お客さん、大丈夫でしたか、本船は・・・」
トーダは客室に入るが、そこには誰もいない。
「おかっしいな、さっきは悲鳴が聞こえたが」
狭い船内を見渡してもあの黒ずくめ5人組は見当たらないのだ。
トーダ船長が船内を捜索している間、セイル航海長はハイパードライブの制御を試みている。
「だめだ」
「どうした?」