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#その330 お金をたくさんもらっているので、トーダには拒否する選択肢はない

#その330


「もちろんです、それではご一緒にどうぞ」


 トーダはそういうと、航法ユニットの入ったケースを持つ黒服の一人を伴って、客室から通路に出る。航法ユニットなどの貴重で重要な装置は操船室内の奥まった小部屋に集積されている。


 トーダは乗組員の一人である航海長セイルと黒服から渡される航法ユニットと既存ユニットを交換する。


 交換と言っても、ユニットが収まっている蓋を開けて、既存ユニットを取り出し、黒服が渡してくれるユニットをはめこむだけの簡単な作業だ。


 航海長セイルが隣にあるステータスパネルを操作すると、インストールしたばかりの新航法ユニットはクルーザーイルカ号のシステムに認識適合される。


「船長、特に問題なく渡された航法ユニットのインストールは完了しました」

「うん、ご苦労様」


「これで、よろしいですかね?」

 トーダは隣にいる黒服に尋ねる。


「これでOKです、お手を煩わせて申し訳なかったです」

「いえ、たいした手間ではないので、これは新航法ユニットのテストですかね」


「まあ、そういうことにしておいてください」

 黒服は目元に微笑みを浮かべてこの話題を終わりにする。


「さて、これで出発してもよろしいですか?」

 トーダ船長はそういうと、客席内に戻る。


「ええ、よろしくお願いします、キャプテン・トーダ」

「トーダ船長、積荷のチェック完了しました」


「おう、お疲れさん。こっちも確認終了だ」

「キャプテントーダ、取り付けた航法ユニットのデータを定期的にサンプリングしたいのだが、持ち込んだ機器を客席で動かしてもよろしいでしょうか?」


 黒服リーダにそう聞かれる。お金をたくさんもらっているので、トーダには拒否する選択肢はない。


「ええ、どうぞ」

「承諾ありがとうございます、お礼として、無事に運航が終われば、航法ユニットはそのまま差し上げますよ」


「ありがとうございます」



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