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#その328 船長トーダは己の幸運を女神さまに感謝する

#その328


 船長トーダと航海長セイルは、イルカ号オーナーになる際に、これも運よくさほど待つことなく航法ユニットを入手する。


 通常であれば、航法ユニットは申し込みから審査をへて実際に船体に装着するまでには10年近い年月がかかると言われている。船長トーダはある条件にサインすることで航法ユニットを優先して入手することに成功する。


「これで、俺の船長人生は開けてきた」

 船長トーダは己の幸運を女神さまに感謝する。


 船長トーダが航法ユニット入手先のデーラーから示された条件は、{ディーラーから紹介する客の依頼は最優先して実行する}ことである。


 どのような依頼なのかは示されていないので、安全ではないし、客の素性を詮索すると命にかかわるのではないかと推測できる。だが、「料金は通常よりも割り増しする」「違法性はもちろんない」との但し書きを信用し、この条件で契約する。


 これまでに貸し切り航行や定期運航船の代打、ディーラーからの優先依頼など様々な航行をこなしてきた。幸い大きな事故には遭遇していないし、起こしてもいない。


 今回の依頼は、ディ-ラーからの依頼なので、最優先で引き受けている。インターワープステーションIWS3ベータから惑星エリシアまで5名の客の輸送だ。


 通常の運賃よりも50%は上乗せされている。ただし、乗客の身元に関して一切関知してはならない、というのが契約条件だ。料金は出航前に50%、惑星エリシア到着後に残りを支払ってもらえる契約だ。


 そうそう、もう一つ条件があった。{インターワープを通行する際の航法ユニットは乗客が持ち込むものを使うこと}だ。きっと新型航法ユニットの試験運行なのだろう。


 新型ユニットの開発は人目を避けて行うことが大切でイルカ号のように目立たない小型船にこのような依頼があることはさほど珍しくない。


 IW3はこれまでにも何度も通過しているインターワープであり、危険性は特にない。後は、乗客の質である。船長トーダは今までに依頼主に直接会ったことは一度もない。


 宇宙船イルカ号契約の時ですら、画面越しに話をしただけである。その相手も果たして人間であったかどうか、今となっては自信がない。


 船長トーダは指定の日時正確にインターワープステーション3宇宙港12番ポートにクルーザーイルカ号を入港、接岸する。


 接岸するとすぐにイルカ号の最終点検と消耗品の補給を行う。しばらく待機しているとお客さんを乗せたポートビークルが12番ポートに到着する。


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