#その323 チョコを見て、抱きしめていると体の芯がほわほわと暖かくなる
#その323
それにしても自分はなんで、黒ネコなんでござるかね?けっこう酔っぱらった頭で考えてもオルカ号の前はなにをしていたのかは記憶をロックされているのかチョコは思い出せない。
航法ユニットの末席に連なっているはずなのに、以前の航海記録がすっぱり消えてるなんて、全くいいところがないでござる。ノバの膝の上でぶつぶつとつぶやくチョコをノバはぎゅっと抱きしめて、リアル猫耳に唇を寄せてノバは言う。
「記録なんて、なくてもだいじょーぶ、このノバ様の無限の記録をそのうちアリス姉に頼んでぶちこんでもらおうね」
「ノバ様、よろしくお頼み申す」
チョコはそういって頭をちょこんと下げて、にゃおんとネコらしく鳴いて見せる。
「チョコ、チョー可愛いよお」
ノバはそういうとチョコをぎゅっと抱きしめる。
ノバが記録しているらしいここの星系マップを全てぶちこまれたら、チョコの航法ユニットはもしかしてぶっ飛ぶのかもしれませんぞ、と独りつぶやいてみるがノバはそんなことはもう忘れたらしくて、チョコを抱きしめたまま、よだれをたらしてだらしなく寝ている。
ノバも捨てられた野良RAIの期間が長かったせいか、人の愛情が今一つわからない。それでもハルトが自分を大事にしてくれることはわかる。
ハルトとルミ姉が仲良しを超えて愛し合っているらしいこともわかる。ハルトとルミ姉の隙間に入り込もうとしたこともあるが、どうもそれは違うような気がして、最近は突撃していない。
そんな時にチョコが現れた。RAIとはちょっと違うらしく、黒ネコだ。しかもなぜかござる、とどこで覚えたのか言葉遣いも怪しいのだ。
でも、チョコを見て、抱きしめていると体の芯がほわほわと暖かくなる。こんな感覚は初めてだ。ハルト隊長とルミ姉も抱き合ってキスしている時はこんな感じなんだろうか。
チョコのしっぽを触りながら、ノバはそんなことを思う。
「ノバ様ー、くすぐったいでござるよー」
チョコが抗議の声を上げる。
「あ、ごめんよ、ついね」
「いいんでござるよ。それよりノバ様、そろそろお開きにしないと明日起きられないでござろう?」
「そうだねー、もう寝ようか」
そういいつつ、二人は会場を後にすると自分たちの部屋に向かう。
「RAIも酔うのか・・・」




