#その31 とんとんとん・・・どうぞって、宇宙船ルミナにはルミナしかいないよね
#その31
ハルトが船長席を床に下ろして、その場に立つ。3Dルミナは等身大となってハルトを船長室に案内する。繰船室の分厚いドアを開けて、円形通路をくぐる。
少し歩くとそこはリビングスペースだ。船長室はリビングスペースの中でも繰船室に一番近い場所にある。ちなみに隣はリビング兼食堂らしい。ルミナは船長室の前に立つと、ドアを開けてハルトを誘う。
「船長、船長室はここです。」
「ルミナ、ありがとう。」
ハルトが一歩船長室に入る。室内は落ち着いたブラウンでまとめられており、小さな机と椅子、大きめのベッドが作り付けになっている。
小さな窓からは宇宙空間が見えるようだ。宇宙船内ではあるものの、洗面とシャワースペースもあるようで元が日本人のハルトにはちょっとうれしい。
「船長、ゆっくりしてください。」
ハルトは船長室に入ると、ベッドにダイブインしてそのままごろんと横になる。
ベッドはふかふかなのにちゃんと固めになっていて、寝心地が良さそうだ。
「ふぅーっ」
ハルトは大きく深呼吸すると吸った空気を思い切り吐き出す。
ここは宇宙空間だ。今呼吸している空気でさえ人工のものなのだ。船体の外側では一秒たりとも生きることができない過酷な環境に身を置くことになってしまった。
この数日でめまぐるしく変わりながら起こったことを振り返って思い出してみる。交通事故にあって確かに一度死んだ。
天界?神界?で女神ソフィア様に今いる宇宙異世界に転生させてもらった。宇宙ステーションでデブリ拾いのバイトをして、出会い系サイトでルミナに出会って、宇宙船ルミナの長になった?、宇宙空間での攻防戦もあったなあ。
なんだかすごく濃い日々だなあ、おっとルミナに一目ぼれしたことが一番大事なことだ。考え事はまとまる内容ではなく、つらつらと思い出していると、船長室のドアがノックされる。
「とんとんとん・・・」
「どうぞって、宇宙船ルミナにはルミナしかいないよね。」
ルミナは実体は持たないはずだが、この船体そのものなのだから、ドアのノックも可能というわけか。
「失礼しまーす。」