#その307 オウアクは多分、逃げたんじゃないかなあ
#その307
AIを入れ替える感覚はハルトにはきっと理解できないだろうと隊長なのに説明しなかったのだ。それは人間にすれば、人格や自我の入れ替えに相当するでの、絶対に受け入れてもらえそうもない解決方法だ。
だが、まさかチョコ・ショコラなどというAIを拾ってしまうことまではさすがのノバも想定していなかった。
オルカ号の航法ユニットにアリス特製新AIをインストールし終わったノバは、ううーんと背伸びをする。航法ユニットコンソールから、新AIがきちんと動作していることを一応確認する。
新AIはなんとかオルカ号を認めてくれたようだ。ノバは、航法ユニットからケーブル類を全て外して、ハルトとルミナに完了連絡を送る。
「ノバよりハルト船長、ルミ姉、全てのレスキュー作業が終わったので、これより帰艦するよ」
ノバがそういうと、ルミナス号にいるハルト船長から返事がある。
「ハルト了解、気を付けて帰ってきてくれ」
「ノバ了解!」
ノバは元気よく返事をする。そしてオルカ号の後部格納庫に向かい、収納してあるスペースバイクにまたがる。
「ノバ任務完了、フェニックス2号とオルカ号を曳航してルミナスに向かうよお」
リリアに連絡すると、ぎゅおん、ぎゅおんとスペースバイクのエンジン音を響かせる。
次の瞬間、ノバは宇宙空間へ飛び出し、にぎやかな音が聞こえた周辺は静寂を取り戻す。ノバはオルカ号の宙域を一回り警戒すると、フェニックス2号と合流する。
「リリアお待たせ、オルカ号を曳航して旗艦ルミナスに向かうよ」
「リリア了解」
「曳航用ワイヤをかけるから、よろしくね」
ノバはそういうと、スペースバイクを器用に操縦して、オルカ号にワイヤをセットする。
「リリア、ワイヤセット完了、フェニックス2号、発進して」
「リリア了解、フェニックス2号、旗艦ルミナスに向かいます」
フェニックス2号はオルカ号を曳航し、その周囲をノバが警戒航行しながらルミナスに向かう。
「ねえ、リリア」
「なに?ノバ姉?」
「オウアクとの決着は着いたのかなあ?」
「さあね、ハルト船長に聞いてみないとわからないけど、オウアクは多分、逃げたんじゃないかなあ」




