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#その303 私にはその権限がありません、no authorityってやつですね

#その303


「・・・・」

「ノバはあなたを助けに来たんだよ、どうか信じて欲しいな」


 ノバがあきらめず繰り返し呼びかけると、やがて霧の中から姿を現す生命体らしき反応がある。


「あなたはだーれ?」

「私はノバ、スペースレスキュー隊フェニックスの中佐だよ」


「ノバさんが船長を助けてくれたの?」

「うん、そうだよ、だからあなたを捕らえている起爆装置をこかれから解除するね」


「ありがとう、私はオルカ号航法ユニットのAIです。この船のすべての機能を司る者です」

 ようやくオルカ号航法ユニットAIに出会えたノバは慎重に接触を進める。


「ねえAIさん、オルカ号はこれからどうなるの?」

「はいノバさん、オルカ号はこのまま宇宙の果てを目指すように航路をセットしています」


「じゃあさ、AIさん、その航路は悪いけど解除でお願いしてもらっていいかな?」

「ノバさん、残念ですが、それはできません」


「なんで?」

「私にはその権限がありません、no authorityってやつですね」


 オルカ号のAIは頑固で、生真面目なようだ。ノバは説得するのも面倒くさくなり、単刀直入に

AIに告げる。


「じゃあ、このノバ様が権限を与えようじゃないか」

 ノバは少し芝居がかった口調でAIに命ずる。


「女神ソフィア様の眷属であるRAIノバがオルカ号AIに命ずる。今の航路を解除して、惑星エリシア衛星軌道へ戻る航路に変更せよ、ついでにエンジンを爆破する起爆装置も無効とせよ」

 ノバは接続しているAIシステムに直接命令を上書きする。


 オルカ号AIはオウアクに与えられた命令と矛盾するノバの指令に一瞬躊躇する様子が見られたが、上位RAIであるノバの命令をすんなりと受け付ける。


「オルカ号はRAIノバ様を新たな命令者マスターとして書き換えました。そのマスターより新たな命令を受け付けました。第一の命令変更としてこれより惑星エリシア衛星軌道を目指します」

「うむ、よろしい」


「次に第二の命令として、エンジン起爆装置は無効とし、危険物に認定します。よってこれは船外に排出します。」


 オルカ号AIはそう復唱すると、エンジン出力を一旦、10%のアイドリング状態に戻してから、進路を180度回頭する。



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