#その302 だってノバはスペースレスキュー隊フェニックスなんだからね
#その302
後部ハッチからオルカ号格納庫に進入したノバは、格納庫内にスペースバイクを止める。
バイクを降りて、ブリッジに向かう。ブリッジと通路を隔てる分厚い扉を開けると、そこにはサイト船長が仁王立ちになって、前方をにらんでいる。
「サイト船長、フェニックス隊のノバだよ」
「ノバさん、ありがとう、こんなところまで来てくれて感謝する」
「サイト船長、そう思ってくれるなら、一緒に脱出するよ」
「ノバさん、もうこの船は助からないと思うんだ、だから俺は船長としてこの船を看取ってやりたいんだよ」
「ふーん、そうなんだ」
「だから、ここに残るから、悪いけど、帰ってくれないか」
サイト船長の意思は硬いようだ。でも、ノバだって意志の強さは負けていない。
「サイト船長、ノバはこのオルカ号もサイト船長も両方を助けるために来たんだよ、だってノバはスペースレスキュー隊フェニックスなんだからね」
ノバはそういうとサイト船長に胸を張って自慢する。
「でも、オルカ号には止まると爆発する仕掛けが施されていて、打つ手がないんだよ」
「その仕掛けをなんとかするためにノバはここに来てるんだよ、船長、航法ユニットに触ってもいい?」
「ノバさん、よろしくお願いします」
「サイト船長、ノバに任せてね」
ノバはそういうとオルカ号の航法ユニットのコントロールパネルを操作して、システム設定を呼び出す。
「サイト船長、これだよね」
「そうだ、それだ、ありがとうノバさん」
「いいんだよ、さあ起爆装置を解除するよ」
ノバはそういうと、宇宙服から通信ケーブルを引き出して、コントロールパネルに接続する。
「ちょっと中に入れてね」
ノバはそういうと、RAIとしての意識の一部をオルカ号航法ユニット内へと伸ばす。
ノバは慎重に航法ユニット内のAIの所在を探している。AI内部はある場所は深い森のようでもあり、ある場所は砂漠のように見える。そして高い山や深い谷もある。
「さあ、航法ユニットを彷徨う迷子のAIさん、出ておいでよ」
ノバは航法ユニットを司るAIに話しかける。