#その30 いえ、ルミナが世間知らずだったために騙されてしまっただけです
#その30
この宇宙世界では恒星間を接続し、光年かかる距離を圧縮する航法が確立されており、インターワープと呼ばれる。各宇宙船がワープという航法を行うのではなく、ワープができる空間に入る技術のことをIW=インターワープと呼んでいる。インターワープを行う出入り口をIWG=インターワープゲートと呼ぶ。
インターワープは特定の星や団体が独占することが絶対にできないように、インターワープゲートを開閉するキーを各団体が分割して保持している。そして各団体の上位組織であるIW組合で統括管理をしている。
このため独占することは極めて困難である。インターワープゲートを利用するにはIW組合にてあらかじめ承認を受けたインターワープ航法ユニットが必要になる。
車でいえば高速道路を走行する際に料金収受システムを利用するために必要なETC送受信機とETCカードに相当する。航法ユニットは申請承認されることで入手することが可能になるが、そのためにはどこかの国に所属しなくてはならないので、今の宇宙船ルミナには無理である。そこで、別の入手方法を考えなくてはならない。
「ルミナ、それはどうしてなんだい。聞かせてもらっても?」
「その昔、宇宙船ルミナと敵対していた勢力がありました」
「それは前にもちょっと聞いたよね」
「その時には別の方がルミナの船長だったのですが・・」
「その船長はどうなったの?」
「その船長は大金に目がくらんで、航法ユニットを売り飛ばしたのです」
「そうか、そうだったんだ」
「ついでに火器管制ユニットと私も利用方法がわからないユニットをセットでこの船から売り飛ばしたのです」
「それはひどいな」
「その結果、宇宙船ルミナは存在価値を大きく失い、抵抗むなしくあの惑星に閉じ込められたのです」
「そうか、大変だったね。」
「いえ、ルミナが世間知らずだったために騙されてしまっただけです。」
「まあ、今後のことはおいおい考えるとして今日はそろそろ休むとしようか」
「船長、ルミナは休む必要はありませんが、ハルトさんには休息は必要ですよね」
「うん、そろそろ体が疲れてきたよ。人間は1/3の時間は寝ないと生きていけないから仕方ないよ。この船に船長室はあるのかい?」
「もちろんあります。ご案内します。」