#その296 宇宙の果てへスイングバイするルートに入ります、それでも実行しますか
#その296
「サイト船長、次の指令をあげようじゃないか、
「オルカ号よりオウアク、今度はなんでしょうか」
「そうだな、船の速度を今より20%上げろ」
オルカ号の速度を今以上増速すると惑星エリシア惑星周回軌道脱出速度を超えてしまう。
そうなってしまうと、自力で軌道修正するパワーまでは持たないオルカ号は再び惑星エリシアの惑星軌道に戻すには、大きなエネルギーを発生できるけん引用宇宙船の手配と膨大な時間が必要になってしまう。
お客さんを別の宇宙船に乗せ換える必要も出てくるだろう。外宇宙探査用人工衛星はこの軌道を利用して、大きく加速して旅立つケースが多いのだ。
「そんなことしたら、もう2度と惑星エリシアに戻れなくなります、勘弁してください」
「じゃあ、今ここで爆発するんだな」
オルカ号船長サイトは、大きくため息をつく。そしてもちろんオルカ号を爆発させたくはないので、仕方なく機関AIに指示を出す。
「機関AI、機関出力20%アップ」
「サイト船長、命令には従いますが、惑星エリシア周回軌道を振り切って、宇宙の果てへスイングバイするルートに入ります、それでも実行しますか」
Yes、Noはついていないが、機関AIは至極まっとうな確認をサイトに求める。
「そんなことわかってるよ、わかってるけど、今はオウアクの言うことに従おう。我慢してチャンスが訪れるのを待っていれば、きっとあのレスキュー隊フェニックスがなんとかしてくれるはずだ」
サイト船長は断腸の思いで、オウアクの指示に従う。
「機関AI、Yesだ、やってくれ」
「機関AI、了解、出力を20%アップします」
機関AIはサイト船長の気持ちがわかるのか、しぶしぶとオルカ号を加速する。船内でもわかるほど加速し、その速度は徐々に外宇宙脱出速度に近づく。遠くに見えるわずかな星が増速によりゆらめいて見える。
「くっ、こんなところで加速はしたくないけどな」
オルカ号はさらに加速を続ける。
その速度は外宇宙脱出速度を超える。そしてついにオルカ号は惑星軌道から離脱し、外宇宙への航路に向かいだす。