#その293 オルカ号は停止すると爆発すると犯人から言われているのですね
#その293
重力コントロールが働くと、ルミナスは地表を離れて、ふわりと宇宙へ向かう。ブリッジには補助エンジンとプラズマジェネレータの作動音がわずかに聞こえるのみだ。
一昔前のロケットが轟音を響かせて大空に向かって打ち上げることと比べれば段違いに静かである。重力コントローラのテクノロジも過去の技術を使うオーバーテクノロジの一つだ。Gコンを装備している宇宙船はまだ少なく、旗艦ルミナスは貴重な存在である。
ブリッジにいるハルトをはじめとするレスキュー隊員たちは大気圏から宇宙へ向かう時の素晴らしいグラデーションを何度見ても同じ回数だけ感動してしまう。
そして今回の任務も無事にこなして、帰還するときにまた同じグラデーションを見ることができるように各自がそれぞれの信じるものにお祈りする。
ちなみにハルトは女神ソフィア様に祈るし、ハルト以外の隊員達は目の前にいるハルトに祈ることにしている。
「惑星エリシア宇宙港管制よりレスキュー艦ルミナスへ、聞こえますか」
「こちらルミナス艦長ルミナです、よく聞こえます」
「惑星間連絡フェリー オルカ号の状況を送ります」
「ルミナス了解、オルカ号は停止すると爆発すると犯人から言われているのですね」
ルミナは要求を無視すると本当に爆発するのかと、今のところは疑っている。そんなルミナの気持ちを知ってか知らずか管制からの説明は続く。
「管制より、その通りです、犯人像はいまだに不明、通信のみで指示を受けています」
「ルミナス了解、オルカ号と直接交信しても構わないですか?」
「管制より、犯人から特段の制約はないようです、ただ、止まったら爆発、とだけが条件です」
「ルミナスより、それではオルカ号へダイレクトコンタクトを試みます」
ルミナはそういうと管制との交信を終了する。
「ハルト隊長、ティアナにオルカ号と接触させていいですか?」
「ああ、やってみよう」
ハルトはルミナの提案を支持する。
「ルミナよりティアナ、聞こえる?」
「ルミ姉、ティアナより、よく聞こえるよ」
「状況、わかった?」
「うん、わかった、資料は受け取って目を通したよ」
「じゃあ、オルカ号とコンタクトできるわね?」
「ティアナ了解、オルカ号にコンタクトします」