#その289 ブリッジのパネルの一つが赤と黄色の点滅をして、びーびーっと警報音を発している
#その289
航法ユニットが示す現在位置と目標位置にずれがないか、航路は予定通りで大丈夫か、また周囲に危険を及ぼす物体や兆候がないかを常に確認している。
運航はほぼ航法ユニット任せとはいえ、船長ともなればそれなりにやることはある。一番大切なことは宇宙船オルカ号の運航責任は全てオルカ船長が担っているということだ。なにか問題が生じればそれはオルカ船長が解決しなくてはならないのだ。
「そろそろ惑星エルシアが見えるころか?」
サイトは独り言をつぶやくと、目の前の表示パネルに目を向ける。
「なんだこれ?」
船長は首をかしげながら目の前のパネルの表示に目を落とす。
ブリッジのパネルの一つが赤と黄色の点滅をして、びーびーっと警報音を発している。パネルには警戒色で怪しげなメッセージが表示されている。
{この宇宙船オルカ号の船体に爆発物を仕掛けた。どかんと作動させたくなかったら、指示に従え}
「はあ、なんだこりゃ」
サイト船長は見た直後はいたずらだととっさに感じる。
こんな嫌がらせはあちこちの宇宙船で見つかっているとネットで知ったばかりだ。
「やれやれ、このオルカ号も有名になったもんんだ」
サイト船長は苦笑いをする。
惑星エリシアでも惑星ルクレアでも、こうしたいたずらは残念ながら後を絶たない。運航前に船体は隅々まで点検して怪しい物体がないことは確認している。
また航行中の宇宙船に気が付かれないように接近して爆発物を仕掛けることなどできはしないとサイトは思っている。航行している責任者としての船長としては内心くだらないイタズラと思うが、万一を考えると乗客の安全確保が最優先事項だ。
そう考えるとサイト船長は思い直し、ブリッジに装備している船内放送のマイクを手に取る。
「オルカ号に搭乗している乗客の皆さんにお知らせします。ただいま当船には爆弾が仕掛けられているもようですので、ご自分の座席から離れないようにしてください」
サイト船長はにこやかにアナウンスをしたので、乗客も本気にはとらえないであろう。今はそれでいい。
{サイト船長、今のアナウンスはなんだ。なめるなよ、これは脅しではない}
次のメッセージを見たサイト船長の顔が曇る。