#その264 ミーナミはそれなりの苦労をしたもののなんとか宇宙大学への入学を果たす
#その264
実は学習マシンが頭脳に知識や技能を注入す原理はわかっていない部分があり、インターワープと同様にオーバーテクノロジーと囁かれている。
「でも、俺らは学習マシン適合があるおかげで、一般人が10年以上もかかる宇宙船操船ライセンスをこうして割と簡単に取得できるわけだからいいじゃないか」
アミルはいうが、宇宙船操船免許認定試験に何度か落ちた悲しい実績は内緒だ。
「俺ら宇宙大学生は学習マシンによる操船ライセンス取得に耐えられるって認定されてるからこそ、こんなに若くして3人でクルーザを操船できるんだからな」
ミーシャがアミルをフォローする。
「まあな、それは確かにそうだな」
アミルも納得する。
3人はそんなとりとめもない話をしながら、宇宙船サンディ号を操船している。
「でもさ、宇宙大学って大変だけど、無事卒業できれば収入は高給を保証されるからがまんがまん、だよ」
ミーナミが言う。
「そうだよな、俺は早く卒業して宇宙船の整備士になって金を稼ぐつもりだよ」
アミルは宇宙船いじりが好きで、宇宙船整備士になりたくて宇宙大学に入った口だ。
「俺も宇宙大学の医療系の学科を卒業したいんだよね」
ミーシャも宇宙大学に在籍している理由はミーシャの将来的な目標のためである。
「まあ、とりあえず今はエリシアでスペースレスキュー隊の情報を集めようぜ」
3人はそんな会話をしつつ、惑星エリシアへ向かっている。
3人が操船しているサンディ号はミーナミの父親が所有している自家用宇宙船だ。一応20人乗りだが、実際のところ快適に乗船できる人数は10人がせいぜいであろう。一週間の旅ともなれば寝る場所も必要になるから、5人がいいところではないか。
航法ユニットを今のところ装備していないので、インターワープを利用する航行はできない。それでも、IWS3アルファから惑星エリシア位までの運航であれば楽勝だ。
頼りになるAI連動型オートクルーズも装備されているからIWSや惑星着陸制御もほぼオートでこなしてくれる。
ミーナミの父親は子どもが生まれるとすぐにローンでこの船の購入を決める。そして、家族をあちこちの、といっても近場ばかりであるが、宇宙旅行に連れて行ってくれた。ミーナミが宇宙を大好きになったのはこの船のおかげでもある。
そんなミーナミはそれなりの苦労をしたもののなんとか宇宙大学への入学を果たす。胸を膨らませて入学式を済ませた直後に、緊張から解放されてお腹が空き、学食で何を食べようか迷っている丁度その時に、声をかけてきた学生がいる。