#その246 これをバタフライ効果や{カゼガフケバオケヤガモウカル}理論という
#その246
リーフは工具を投げた男達に責任を取らせようと声をかけるが、二人はすでに逃げ去った後である。
「まずい、まずい、これはまずいぞ」
宇宙空間ではちょっとしたきっかけで発生した事象が、摩擦が少ないためにドミノ倒しのように他の事象を誘発して、大事になることがままある。
これをバタフライ効果や{カゼガフケバオケヤガモウカル}理論というが、イマイチぴんとこない。リーフは思う。
「今がまさにその時だ」
水を生成しながら吹き出す回転体と化したH2Oユニットは、衛星オツキをどんどん離れてしまう。このまま放っておけば、さらなる惨事を招くことに間違いない。
「最近、スペースレスキュー隊フェニックスなる組織が活動を始めたらしいぞ」
監督会議で耳にした話だ。
「なんでも困ったときに無料でかけつけてレスキューしてくれるらしい」
そんな話を聞いていたリーフは急いで管理事務所に戻ると、全周波数型通信機のスイッチを入れて、マイクに向かって声をだす。
#スペースレスキュー隊フェニックス 初出動
「メーデー、メーデー、こちら衛星オツキ宇宙ステーション建設第1工区監督リーフ、事故発生事故発生」
「・・・・」
「メーデー、メーデー、こちら・・・」
「・・・・」
「こんちくしょうめ、誰も応答しないじゃないか」
リーフはあと1回コールしてだめなら、本部へ報告だと思っている。
「ルミ姉、今、メーデーって呼ばれなかった?」
ノバに言われて、ルミナは全周波数通信機のログを確認しようと、操作する。
「メーデー、メーデー、こちら衛星オツキ宇宙ステーション建設だ1工区監督リーフ、事故発生事故発生」
すると、ちょうどそのメーデーのコールが聞こえてくる。
「こちらレスキュー隊フェニックス、リーフさん応答できますか」