#その244 宇宙空間で一人になってしまった場合、生き残る確率が高いのは圧倒的に女性であるらしい
#その244
「あ・・・すみません」
「よし、これでOKだ。気を付けろよ」
リーフは自らの手を動かして、部品を確認すると後は作業員に任せてさっさと管理室に戻る。
この第1工区の現場監督は全部で10名いて、リーフはその中の一人だ。リーフはこれまでに、惑星エリシアセレスタワー建設工事、インターワープステーション3アルファ補修工事など、けっこうメジャーな建設現場に関わってきたフリーの現場監督だ。
「おい、リーフさん」
現場監督の総監督がリーフに声をかける。
「なんでしょうか?」
「どうやらこのH2O生成ユニットは5台で1ラインになるようだな」
「そのようですね」
「ということは、残り4つの工区で最低20台のH2O生成ユニットが必要ということか?」
「そうです、ただ、宇宙ステーション建設では資材不足ということもありますので、ひとまず各工区につき3台としておいたほうが無難でしょうな」
「ふむ、それはそうか」
「ま、ここ第1工区で宇宙ステーションのコア部分をなんとか完成させちゃいましょう」
「わかった、残り4ラインの建設も任せるぞ」
「もちろんです、総監督。お任せください!」
リーフがそういうと、総監督は満足そうにうなずいて管理室に戻る。
第2工区では酸素生成ユニットを建設予定地に設置する作業が進められている。こんな具合にここ衛星オツキは建設作業で毎日が活気に満ちている状態だ。
リーフは今日も第1工区H2O生成ユニット設置現場の監督に忙しい。宇宙作業員はいろいろな宇宙建設現場を渡り歩いて現場として働き、それでも生き延びてきたタフで癖の強い人間たちだ。
男女比率で言えば6対4なのだが、女性もけっこう多いのが意外だ。宇宙空間で一人になってしまった場合、生き残る確率が高いのは圧倒的に女性であるらしいので、そのうち半分は女性となるのであろう。
「てめえ、今なんて言いやがった」
「お前みたいなへっぽこは荷物をまとめて国へ帰れといったんだよ」
騒動が起きていると言われたリーフが駆け付けると、屈強な作業員二人が工具を手にして、対峙しているところである。
「お、おい、やめろ」