#その240 ノバ、プラズマエンジン両絃微速にて衛星軌道へ、目標オツキにセット
#その240
「ノバ、重力コントローラのモードを通常に戻してくれ」
「イエッサー」
「ティアナ、出航するぞ、艦に戻れ」
「ハルト隊長、ティアロイドはこのまま旗艦ルミナスを護衛でいいっすか?」
「いいけど、ティアナ、お前、それでいいのか」
「イエス、外の方が気持ちいいっす」
ティアナはそういうと、先行して上空へ爆速で飛び去ってしまう。
「ルミナより総員、旗艦ルミナス離陸します、ノバ、重力コントローラ動作開始」
「ノバ了解、Gコン50へ、ルミナス浮上します」
スペースレスキュー隊フェニックス旗艦ルミナスは重力コントローラを作動するとその巨体を軽々と離陸大空に向かって浮上する。
一旦離陸すると、あっという間に高度を上げる。デッキ内に資材機材を満載しているとは思えない身軽さだ。
「ハルト隊長、なにもこんな手間をかけてコンテナを運ばなくても、オツキでアリスがマイクロマシンを駆使してぱぱっと宇宙ステーションを作っちゃえばいいんじゃないですか?」
リリアがハルトに真剣な顔で尋ねる。
「いい考えだけど、それじゃあ、宇宙ステーションができた後の運用やメンテナンスが自分たちでできなくなる可能性があるからな」
「そうなんですね」
「だから、できるだけ自分たちで手を入れたほうが今は大変でも結果的には手がかからないことになるんだよ」
「ふーん、そんなもんなんですねえ」
リリアはわかったようなわからないようなあいまいな返事をして寄越す。
ブリッジから見える景色は大気の青がグラデーションとなって薄くなり、今度は宇宙の漆黒の闇が包み込む。
「ノバ、量子プラズマツインエンジン始動」
「ノバ了解、プラズマエンジン始動開始・・オールグリーン」
「ノバ、プラズマエンジン両絃微速にて衛星軌道へ、目標オツキにセット」
「ノバ了解、オツキに向かうよ」
旗艦ルミナスを運用すれば、宇宙港離陸からオツキまでは数時間の短い旅だ。重力コントローラを使っているとはいえ、大気圏航行はやはり気を遣う。
宇宙空間に躍り出たルミナスは気のせいか生き生きとしているように見える。