#その232 これは卵かけごはんと言って{わしょく}の原点ともいえるものなんだ
#その232
ティアナに呼ばれてダイニングに行くとルミナもいる。
「ねえハルトさん、今日はここでお食事にしませんか?」
「それいいね。今日は特別だし、厨房を借りてもいいかもね」
ルミナの提案で3人で手料理を作って楽しむことにする。それぞれが得意の料理を一つずつ作って提供する趣向だ。フェニックスベースの厨房は広くて使いやすいのでとても助かる。
「ハルトさん、私はこれを作りますね」
ティアナが冷蔵庫から何かを取り出す。
「それってジャガイモ?」
「はい、そうですよ。こういうお料理は得意なんです」
ティアナはそう言うと手際よく皮を剥き、芽も取り除くと一口大に切っていく。そして鍋で炒める。水を入れ塩コショウをすると煮込む。最後に牛乳を入れてひと煮立ちさせる。
「できましたよ」
ティアナが作ったたのはホワイトシチューだ。
「これは美味しそうだ」
ハルトは早速一口食べてみる。ホワイトソースの優しい味が口に広がる。ジャガイモもホクホクで、とても美味しい。
「うん、最高だよ!」
「よかったです」
ティアナはほっと胸をなでおろす。そして、ルミナが作ったのはローストビーフとサラダだ。
「私はこれね」
食事をする必要がないルミナにとって料理のハードルはとても高いはずなのに2人の作った料理はどれもとても美味しいい。
ハルトはというと、ルミナス内に設置してある万能調理器に食材コンテナをセットして、メニューから選んでボタンを押しただけである。ハルトのチョイスは、なんとTKG=卵かけごはんである。
「ハルトさん、これ、なに?」
ルミナもティアナもごはんをよそったどんぶりと生卵に醤油をかけた小鉢を見て、ハルトに恐る恐る尋ねる。二人にはTKGは料理に見えないのであろう。
「これは卵かけごはんと言って{わしょく}の原点ともいえるものなんだ。ルミナには難しいかもしれないけれど、ティアナはぜひ試食してみて欲しい。」